どん底の中で、会社を売るタイミングがやってきた

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「圧倒的売上規模」が、会社変革のキーワードだった

事業承継に失敗し、リーマンショックの傷口がまだふさがり切れていない時、寝耳に水の話が仕入先から舞い込んできました。

売り上げ目標のバーが、今の売上規模の数倍になるというのです。

求人広告の版元をメーカーに例えるなら、私たち代理店の役割は、求人広告を掲載する会社とメーカーをつなぐ商社のような存在。

メーカーからのマージンで経営は成り立っています。
そして、売上規模によって、段階マージンが適用され、当然、売上の大きな代理店が有利になるわけです。

その、マージンを決める売上の下限バーが現状の数倍になるということは、逆に、その売上バーをクリアできなければ、マージンが下がることになります。

もしクリアできなければどうするか・・・。

現状の売上規模を圧倒的に増やす必要があります。

・他の商品も扱って、売上ボリュームを増やす。
・利益率の高い事業を立ち上げる。
・社員を減員する。

大きくは、この3つだろうと考えました。

次に、その売上にする手段を考える必要があります。

・社員を増員し、取引社数を増やす。
・1社当たりの売上単価を上げる。
・顧客との契約期間を縮めて、スピードアップする。

大きくは、この3つだろうと考えました。

そのためには・・・と細部まで対策を練ろうとしますが、堂々巡りになってしまい、どうしても思考停止状態になってしまうのです。

圧倒的なら、会社自体を変える必要がある。

期限付きですから、悠長な時間はありません。

(果たして、期限の間に数倍の売上を上げるなんて、現実的なのだろうか?)

何度も、ため息が漏れました。

20年以上かけて3倍の売上、社員数も3倍――そんな長期間かけて成長させてきた会社を、一定期間で数倍に成長させることができるのか、私の中でアラームが鳴りました。

人間、120%の成果が求められるなら、現状の努力を2割増しですればいい。でも、200%、300%の成果を求められるのであれば、根本的に仕事、組織、人員全てを180度変える覚悟と実行力が要ります。

そこに思いが至った時、私は「ここをクリアできなければ事業承継なんてできない」――視界が開き始めました。

(今までは版元のメーカーに頼って生きてきた。これからは他力ではなく、自力をつけて、本当のパートナーシップを取ろう――これはメーカーが代理店の将来を考えてくれての英断だったのだ)

今では、大きな改革を要求してきた版元のメーカーに心から感謝しています。
その改革によって、私の事業承継が成功したわけですから・・・。

会社の将来を、私はあの時ほど真剣に考えたことはありませんでした。

そんな時、2人の人物が私の前に現れたのです。

前々からの知り合いでしたが、その2人との出会いは、初めて会うような新鮮味を帯びたものだったのです――。

同業の社長も、同じ不安を抱えていた

同業のH氏に会ったのは、仕入先からの高い要求のあった後、会社の将来に暗雲が立ち込めているさなかでした。

2人は、お互いの会社の中間点に位置するファミリーレストランで落ち合いました。

ランチタイムの終わった午後2時過ぎ--。

「久しぶりだね」という私の言葉に、いつもは野性的なスマイルを見せるのだが、H氏は心持ち元気がありませんでした。

H氏は、私より2歳年下。社歴は当社より短かったのですが、後続ながら、経営手腕に優れており、私と違い、数字に滅法強い男だったのです。

珈琲をひと口口に含んだ後、H氏は口を開きました。

「今回の仕入先からの話、当然耳に入っているよね。どう?」

H氏は探りを入れてきました。その言葉からH氏の不安が読み取れました――。

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