事業承継は身内にするもの。それが当たり前と思っていた。

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まさか会社を売ろうなんて、最初は全く考えていなかった。

私は、50歳(会社設立20年)を迎えた時、事業承継しようと決意しました。そして、遅くとも60歳には会社を去ろうと・・・。

人生100年時代、学生時代からやって見たかったことに専念できたら――そんな思いがベースにありました。

夢の話をすると格好いいように聞こえますが、同時に、もっと現実的な問題が私の前に現れ、「君はどうするつもりなんだい?」と、ことあるごとに迫ってきたというのが正直な話です。

1.広告業界では、ネット商品が主力になってきていて、営業・制作するのはほぼ社員がやってくれるものの、紙主体で生きてきた自分にとって、やりにくくなってきた。

2.それに輪をかけるように、AI、IoTによる第四次産業革命への準備(生産性向上に向けた顧客管理システムの構築、社内の情報の共有化など)がおろそかになっていた。

3.バブルとリーマンの2大ショックからは立ち直ることができたが、これから来るであろう第3のショックに、自分は対応できないのでは、という不安を常時抱えていた。

4.正直、事業への情熱を失いかけていた。

5.大手仕入先からの要求にこたえられる自信がなかった。

社員15人ほどの小さな会社。このままの経営状態でも続けることはできると思った。でも、上記の5つの理由から、このままではいつか廃業せざるを得ないだろう・・・。

そんな思いから、私は、事業承継することにしたのです。

でも、明確な後継者がいるわけではありません。

私はまず、長年勤めてくれたベテラン社員を育成することにしました。

この時は、まさか会社を売る、なんてことは全く考えていませんでした――。

2人の幹部社員の退職は、私の焦りが原因だった。

私はまず、長い間会社に貢献してくれた社員2名(20代後半と30代半ば)に、大きな権限を与え、自立を促しました。どちらも後継者候補として、1年間鍛えようと考えたのです。

ところが、見極めるのに1年は短すぎました。2人とも、私の高い要求に応えようと汗水流すのですが、なかなか思い通りの結果を出してくれません。世のビジネス本に書かれている通り、小さなところから成果を出させて評価し、その積み重ねで、3年ぐらい見てあげないと、候補者がかわいそうです。今ならわかります。

しかも、見極めた後、後継者候補になってからの育成、後継者を確定してからの引き継ぎを考えたら、5年以上の時間は必要です。私は、そのすべてを3年でやろうとしたのです。60歳までにと、のんびり構えていたつもりですが、実は早く引き継ぎたかったのです。

リーマンショックによって業績が急激にダウン。3分の1の社員を自宅待機させている状況の中にあったことが、私自身の焦りにつながっていたようです。

そんな折、大金をかけて2人を幹部研修に出席させました。

その研修は、自分の幼いころからの人生を振り返って、自信を取り戻し、その自信を持った自分が、会社のどの部分に貢献することができるかという内容でした。

ひとりは独立、ひとりは転職していった。

これが直接の引き金になったわけではないのですが、次の道を見つけて、一人は転職、一人は独立していきました。今でも交流はありますが、2人とも幸せな人生を歩いています。

私は、その失敗を反省する暇もなく、すぐに幹部社員の中途採用に切り替えました――。

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