最高の事業承継、知っておくべき「7W2Hの法則」とは?

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会社売を売却する上で、終始持っていなければならないものがあります。

それは何だと思いますか?

これがなければ、社員、家族、取引先、売却先すべてが幸せになる事業承継ができないと言っても過言ではないものです。

――それは、「経営理念」です。

「えっ?会社を売るのに、経営理念なんて必要なの?」
そう思う人がいるかもしれませんが、必要なのです。

以下に、私の体験を踏まえた上での理由を書かせていただきます。

前のブログでも、私が会社を売却する方向に舵を切った時、「なぜ会社を経営するにか」「誰を幸せにするのか」という原点に帰ったお話をさせていただきました。

まずは、そのお話から・・・。

会社を売る目的、その原点を当時の私は忘れかけていた。

「会社を売ることになったよ」

社員にそう伝えた場合、少なからず動揺を与えてしまうに違いない。
モチベーションが下がって、退職者が出てしまうかもしれない。
それを防ぐためにも、営業から1名、制作から1名、事務から1名、
長年貢献してくれた、気の置けないベテラン社員に、今のうちに意見を聞いておきたい・・・私は3人を集めて話し合いの場を作ろうとしていました。

「がくさん(私のニックネーム))、何のために事業承継するんでしたっけ?」

「誰のために事業承継するんでしたっけ?」

相談を持ちかけた、仕入れ先の経営渉外スタッフのH氏(後に、当社の社長に就任))から出てきた質問が、それだった。

私は急所を突かれたように愕然としてしまった。

(自分のため・・・だったんだ)

・自分には手掛けたい夢があった。
・ネット商品の扱いについていけていない自分がいた。
・生産性・効率向上を疎かにしていた自分がいた。
・バブル・リーマンに次ぐ第3のショックが来た場合、会社を持ちこたえさせる自信がなかった。
・前ほど、事業への情熱が湧かない自分がいた。
・大手仕入れ先からの要求に、自力で応えられる自信がなかった。
・3年間の後継者育成に失敗し、経営者としての自信を失いかけていた。

全ては自分の将来のため、自信のない自分の苦境から逃れるため、だったのだ。

心の奥底に沈殿していた頼りない自分が、Hの質問で浮き彫りになってきた・・・。

○○○○。創業後はもちろん、事業承継後の幸せをも創るもの。

「がくさんを責めているわけではありませんよ」

私の愕然とした表情から、Hは何かを読み取ったようだった。

・・・一拍置いて、Hはさらに質問してきた。

「僕ががくさんと出会ったとき、既に会社の経営理念、作っていましたよね?」

「そう。『お客様のそばで自己実現。真心経営で幸せへの貢献』――ずいぶん前に作ったものなんだ」

私は気を取り直すためにも、経営理念に思いを馳せていた。

「どういう意味でしたっけ?」

「社員一人ひとりが、自分自身の成長のために、お客様の人材採用を、自分と自分の会社ができうる手段を用いて、成功するまでお手伝いすること・・・そういう思いで作った経営理念なんだ」

私は、文節を区切るように、ゆっくりと話していた。

「その経営理念に照らし合わせると、最初に戻りますが、がくさんは、何のために、誰のために事業承継するんでしたっけ?」

私の中に、ストンと落ちてくるものがあった。

「社員の成長のために事業承継するんだ!」

そして、こう付け加えた。

「社員のために会社を売るんだ!」

私の声は大きくなっていたようだ。
周りのの酔客が、何事が起ったのかと、一斉に私の方に視線を集中させていた。

私とHは、馴染みの居酒屋のテーブルで差し向いに座っていたのだ。

「がくさん、事業承継は経営理念と一体で捉えるべきです。もちろん、会社の売却に関しても」

Hのその締めの言葉に、私は腹落ちした。

Hは、古参社員3人との話し合いにファシリテーターとして入ってくれることになった。

「正直に話し、意見をもらえばいいと思います。腹を割って話すことです。ただひとつ、注意事項があります。社員が意見を言い終わるまで、一切口を差し挟まないでください。否定もしないでください。本音を言ってもらうためです」

「乾杯!」

私たちはビールで乾杯した。

・・・会社を売却する目的と、会社を創った時の目的、つまり経営理念は一致させる必要があるということを、私の経験をもとに書かせていただきました。

さて、それでは、会社創業時にタイムスリップしてみることにします。

これを読んでいただくと、なぜ2つの目的を一致させる必要があるのか、ご理解いただけると思います。

会社創業時の経営理念4W1H+2W=6W1Hの法則とは?

会社の成長期は、顧客や社員に語る経営者の熱い思いや言葉だけで経営できるものです。

規模が小さいということもあり、隅々に至るまで、経営者の影響下にあり、会社は回転していきます。

ひょっとすると、創業当時は経営理念がまだできていないかもしれません。

私は創業してしばらくは創りませんでした。
当時、そんなものが必要とは思わなかったからです。
自分が思い、自分が動けば、それで会社は成長すると思い込んでいました・・・。

ところが、社員が増えて組織が大きくなると、この会社が他社に比べて、どんな強みを持った会社なのか・・・社員を通して顧客から質問されるようになってきます。

私も、ある時点から、社員から立て続けに質問を受けました。

「お客様から、君の会社はどんな会社なのか教えてくれる?社長から決裁をもらう時に、説明しなくちゃいけないんだ」

そんな内容の質問でした。

それは、個人の会社から法人の会社に、実質生まれ変わる時でもありました。

私は、経営理念を創ることにしました。

さて、経営理念とは何か——。

「社会にわが社が存在する理由。それを経営者が言語化したもの」です。

・誰が(社長、社員などの人材)——WHO
・何を(商品・サービス)——WHAT
・いつ(販売サイクル)——WHEN
・どこで(販売エリア)——WHERE
・どのように(販売方法)——HOW

この4W1Hの経営機能を導く経営理念の前提になるもの、それは、何か?

・なぜ会社を経営するのか——WHY
・誰を幸せにするのか——WHOM

この2つのWです。

「社会の中で誰を幸せにするのか」という2つのWを大前提に、4W1Hの経営機能をどう働かせていくか——それが経営理念と言ってもいいでしょう。

合計すると、6W1Hになりますね。

6W1H+事業承継時1W1H=7W2Hの法則とは?

☆経営理念【7W2Hシート】の一部。事業承継に応用できるものです。

経営理念を創る上で、大切なことがもうひとつあります。

前述したように、ライバルと比較して、他にはない自社の強みは何かということです。
私が社員から質問を受けた、顧客からの要望は、まさにこのことでした。

明文化した私の会社の経営理念、『お客様のそばで自己実現。真心経営で幸せへの貢献』を、法則に従って分解してみます。

「誰のために、なぜ?」という2Wに関しては、「中小企業の顧客(WHOM)の幸せな存続(WHY)と、社員(WHOM)の成長(WHY)のために」という考え方です。

具体的な経営活動4W1Hに関しては、社員一人ひとりが(WHO)、顧客のそばで(WHERE)、顧客の悩みを聞き(WHAT)、解決できるまで(WHEN)、自分のでき得る範囲で、その悩みに応える(HOW)。それが社員一人ひとりの成長を促し、顧客の発展に寄与することになるという内容です。

そして、ライバル社に比べ、人材採用の確率の高い会社という強みを打ち出しました。

社員は営業スタッフだけではありません。制作スタッフや事務スタッフも含め、全社員が顧客のそばで、人材採用の確率の高い会社を目指そうというのが、当社の経営理念でした。

そして、社員と顧客は会社にとってイコールパートナー、という考え方です。

6W1Hを整理してみると、あなたの会社の経営理念が見えます。あなたの会社の強みが見えます。

この経営理念を事業承継時にも応用できれば、事業承継をスムースに行うことが可能になるのです。

原点に帰って、経営理念のを再構築することは、事業承継の成功にダイレクトにつながるのです。

いかがですか?

そして、身内、第三者、どちらに事業承継するのか(WHICH)、いくらで会社を譲るのか(HOW MUCH)という1W1Hを加えて、事業承継する流れを作ってみましょう。

社員、家族、取引先、売却先などのステークホルダーと自分の幸せな未来を拓くことができるのです。

☆社員に会社売却の件でミーティングした時の模様はコチラから↓