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「会社を売るなんて後ろめたい。先祖に申し訳ない」
事業承継がうまくいかない人の思考パターンとして、「先祖に申し訳ない」という考えがあります。
私の周りには、100年以上続く会社の社長がたくさんいます。
名古屋は天下統一を果たした織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の三英傑を生んだ土地柄。
肥沃な濃尾平野が広がる全国の中心にある立地の良さ、伝統的なモノづくり文化も持ち、家業を中心に脈々と事業を紡いできた都市です。
100年以上続く会社はたくさん存在するのです。
私は、その老舗企業を継ぐ現社長に、「会社を売るって、考えたことない?」と聞くと、
「とんでもない。会社を売るなんて先祖に申し訳ない」
ほとんどの社長がそう答えます。
「後継者は決まっているの?」
「・・・」
中には押し黙ってしまう社長もいます。
老舗企業の社長は、自分の代で会社を畳むわけにいかないと、早くから次の代の後継者候補を決める傾向があります。
それが息子、あるいは娘、娘婿、番頭格のベテラン社員というケースが多いという特徴がありますが、最近では継ぎたくないという人が増えています。
「自分のやりたいことじゃなければ、会社は継がない」
最近のマンパワーグループの調査によると、「役職者になりたくない」サラリーマンは8割いることが分かりました。
「責任の重い仕事をしたくない」「自分のやりたい仕事ができなくなる」が主な理由です。
昭和を駆け抜けてきたサラリーマンは、逆に、出世が栄光への架け橋でした。
だから、多くの企業は、会社の事業承継に困ることはありませんでした。
ところが、今は会社より個人の価値観が優先される時代です。
後継者がいないというのは、そこら辺の価値観によるものが大きいと言えます。
会社を売ることは「身売り」をすること!?
「もし後継者を育成できなかったら、どうするの?」
押し黙った社長に突っ込んだ質問をすると、
「・・・何とか探すか、育成するしかない」
不安な顔を覗かせながらも、そう断言するのです。
親しい社長ということもあり、私はストレートに彼に質問してみました。
「業績がだんだんシビアになってきているから、手をこまねいていると会社を閉じることになりかねないけど、それでいいの?」
「それは絶対だめだ」
彼は眉間にしわを寄せ、ため息を吐きました。
老舗企業の社長は、自分の代で会社を第三者に売却することに対しても、廃業することに対しても、大きな抵抗感を示すようです。
本来、これは矛盾した話です。
後継者がいなくて廃業したくないなら、唯一残る手段は、第三者に会社を売却することであるはずです。そうすれば、逆に会社は存続できるのですからね。
でも、強い抵抗感から抜け出せないようです。
それは、「他人である第三者への売却=身売り」のイメージから抜け出れないことに起因します。
後継者育成に10年。無理なら「会社エグジット」しよう
また、彼にはこうもアドバイスしました。
仮に親族や社員の中から後継者を育成するなら、最低10年の時間をかける必要があるけど、できるかと。
①基礎から叩き込む
②経営者のあるべき姿を示す
③自分が通った道を同じように経験させる
④№2のポジションを経験させ、少しずつ経営権を譲っていく
⑤事業承継した後もしばらくは助ける。
後継者の育成には結構な手間ひまがかかります。
それができないなら、比較的短期間に承継できる第三者への事業売却に目を向けようということです。
短期間に事業承継し、会社を存続させるなら、「第三者への事業売却」。そう伝え、私の会社エグジット体験を話したところ、彼の考えは変わっていきました。
今は前向きに「会社エグジット」を考え始めています。
◇第三者への事業売却に抵抗のある方は、こちらをお読みください↓