会社をエグジットする上で、終始持っていなければならないものがあります。
それは、「経営理念」です。
これがなければ、社員や家族、取引先、売却先のすべてが幸せになる事業承継ができないと言っても過言ではありません。
●会社エグジット・・・「後継者のいない中小企業の社長が会社を第三者に売却することによって、自らの次の人生、そして家族や社員、取引先などの利害関係者の幸せを創造し、大廃業時代が来るといわれている日本経済を救う愛ある行為」のことを言います。
「えっ?会社をエグジットするのに、経営理念なんて必要なの?」
そう思う人がいるかもしれませんが、必要なのです。
以下に、私の体験を踏まえた上での理由を書かせていただきます。
会社創業時にタイムスリップしてみることにしましょう。
起業時に創っておきたい「6W1Hの法則」とは?
会社の成長期は、顧客や社員に経営者の熱い思いや言葉を語るだけで経営できるものです。
規模が小さいということもあり、隅々に至るまで、経営者の影響下にあり、会社は回転していきます。
ひょっとすると、創業当時は経営理念がまだできていないかもしれません。私も創業後、しばらくは創りませんでした。
当時はそんなものが必要だとは思わなかったからです。
自分が思い、自分が動けば、それで会社は成長すると思い込んでいたのです。
ところが、社員が増えて組織が大きくなると、この会社は他社に比べてどんな強みを持った会社なのか・・・社員を通して顧客からそのような質問を受けるようになってきました。
私は、ある時点から、社員から立て続けに質問を受けました。
「お客様から、“君の会社はどんな会社なのか教えてくれる?社長から決裁をもらう時に、説明しなくちゃいけないんだ”と言われているのですが・・・」
そんな内容の質問でした。
それは、個人の会社から法人の会社に、実質生まれ変わる時期でもありました。
私は、顧客に会社(主な仕事は求人広告の代理業務)の特徴を説明することを目的に、経営理念を創ることにしたのです。
さて、経営理念とは何でしょうか?
それは、「社会にわが社が存在する理由。それを経営者が言語化したもの」です。
・誰が(社長、社員などの人材)——WHO
・何を(商品・サービス)——WHAT
・いつ(販売サイクル)——WHEN
・どこで(販売エリア)——WHERE
・どのように(販売方法)——HOW
会社を運営していくための、この4W1Hの前提になるものは何か?
・なぜ会社を経営するのか——WHY
・誰を幸せにするのか——WHOM
それは、この2つのWです。
「社会の中で誰を幸せにするために経営するのか」という2つのWを大前提に、4W1Hの経営機能をどう働かせていくか——それが経営理念と言っていいでしょう。
合計すると、6W1Hになりますね。
会社エグジットの「7W2Hの法則」とは?
経営理念を創る上で大切なことは、ライバル社と比較して自社の強みは何かということです。
私が社員から質問を受けた顧客からの要望は、まさにこのことでした。
明文化した当社の経営理念は、『お客様のそばで自己実現。真心経営で幸せへの貢献』です。
これを、7W2Hの法則に従って分解してみます。
まず、「誰のために、なぜ?」という2Wに関しては、「中小企業の顧客(WHOM)の幸せな存続(WHY)と、社員(WHOM)の成長(WHY)のために」という考え方です。
具体的な経営活動4W1Hに関しては、社員一人ひとりが(WHO)、顧客のそばで(WHERE)、顧客の悩みを聞き(WHAT)、解決できるまで(WHEN)、自分のでき得る範囲で、その悩みに応える(HOW)。それが社員一人ひとりの成長を促し、顧客の発展に寄与することになるという内容です。
そして、ライバル社に比べ、人材採用の確率が高い会社という強みを打ち出しました。
社員は営業スタッフだけではありません。制作スタッフや事務スタッフも含め、全社員が顧客のそばで、人材採用の確率が高い会社を目指すというのが、当社の経営理念でした。
同時に、社員と顧客は会社にとってイコールパートナーという考え方です。
6W1Hを整理してみると、あなたの会社の強みを踏まえた経営理念が完成します。
そして、身内と第三者、どちらに事業承継するのか(WHICH)、第三者なら会社(法人)か個人か(WHICH)、いくらで会社を譲るのか(HOW MUCH)という1W1Hを加えて、事業承継する流れを作ってみましょう。7W2Hになりますね。
経営理念を再構築することで、事業承継をスムーズに行うことが可能になるのです。
☆経営理念の創り方の他、会社の査定の仕方、SWOT分析による強みの分析については、「愛の会社エグジット 売り手も買い手も幸せになる事業売却」に書いてあります。参考にしていただけたら幸いです↓