新しい朝ドラ、「おちょやん」、ご存じですか?
昭和の女優、浪花千栄子氏もモデルに、有名になるまでの這い上がり人生を描いたドラマです。
本日は、その第9話。
その中で、日本の喜劇王が放ったひと言が印象的でした。
「ほんま、この世は笑えん喜劇と、笑える悲劇のよじれ合いやな」
これは、後に、おちょやんが世話になる一座の初代が若くして亡くなり、その葬儀の場でライバルの喜劇王が放ったセリフでした。
・・・私は、この言葉で、ある戯曲を思い出しました。
それは、太宰治氏の「斜陽」の元ネタになったロシアの戯曲で、
チェーホフの書いた「桜の園」です。
ロシアの没落貴族が、大事にしていた桜の園を売りに出す、という悲哀に満ちた戯曲なのですが・・・なんと、チェーホフは、この物語に対して、「喜劇」と命名しているのです。
上演後、チェーホフはすぐに亡くなっているため、その真意を後世に残すことはできなかったようです。
・・・ただ、こんな言葉を残しています。
「私の戯曲は誤解に始まり、誤解に終わる」
喜劇王の吐いたセリフとはイコールではありませんが、意味深で、実に人間臭さが漂っているところ、感覚的に似ているのでは、と思いました。
人間ひとりが描く人生、案外、矛盾に満ちたものかもしれませんね。