外食産業も、コロナ禍による緊急補正予算も、同じ「25兆円」という皮肉

kitchen

「家飲み」が進むと、「外飲み」はもとには戻らない?

愛知県の緊急事態宣言で、居酒屋のほとんどが今、休業しています。
やっているにしても、昼のランチのみ。

私の知人の中で、飲食業を経営する人は結構います。
そのほとんどが、やはり休業状態です。

彼らのお店で楽しい会話をしながら飲みたいという欲求が6月から叶うのかと思っていたら、案の定、6月20日まで延長になってしまいました。

お酒好きの私としては、当然、「家飲み」になります。
スーパー、コンビニで酒類とおつまみを抱き合わせで購入し、テレビを見ながら、本を読みながら、お酒をチビチビやっています。

ふと、懐かしくなった面もあります。

「そういえば、学生時代、ボロアパートの四畳半で、こうやってチビチビやっていたなあ」

そんなことを思い出します。

お金がなかった時代でしたから、「家飲み」は日常でした。
友達を呼んでドンチャン騒ぎをして、家主に怒られたことも何度かありました。
電気・ガス・水道を止められたこともありました。

そんなことを思い出しながら、「家飲みも悪くないな」と、楽しんでいる自分がいます。

これは、新たな再発見でした。

酒は外で気の置けない仲間たちと飲むもの・・・そういう習慣から抜け出してみて、最初は大きな抵抗はあったものの、これもいいのかなと・・・。

メリットは他にもあります。
出費が抑えられること、深酒しない分体調がいいこと、家の片づけに目が向くこと等々。

「いいこと再発見」です。

そういう日常を受け入れてみると、居酒屋を始めとする外食産業は、アフターコロナでも元には戻らないかもしれない、と心配になります。

私の場合、「外飲み」に対する欲求の強さに変わりはありませんから、宣言が明けたら復活すると思いますが、「家飲み」の良さを再発見した分、「外飲み」の回数や時間は多少減るのではないか・・・そんな思いもよぎります。

2020年の飲食デリバリーの総額、昨年対比50%増という驚き

さて、外食産業のマーケットが、今どのぐらいの規模かご存知ですか?

――約25兆円です。

コロナ禍への緊急経済対策の補正予算と同じ金額規模です。
(そのうちの飲食店が占めるマーケットは約14兆円)
とても大きなマーケットなのです。

そのマーケットがコロナ禍で、既に大きく崩れようとしているのです。
実に皮肉なものです。

一方、飲食のデリバリーのマーケット規模はどうでしょうか?

2020年は6264億円で、2019年に比べて50%増えています。

街中でウーバーイーツを見かけない日はありません。
あなたにとっても、「50%増」はまさに実感値ではないでしょうか。
これは、「家飲み」が大幅に増えていることの証でもあります。

25兆円、14兆円のマーケットがしぼんでいく中、その減少分を、この飲食デリバリーが補い、もっと大きなマーケットに目を向けると、スーパー・コンビニ外食・飲食店のマーケットを奪っている構図になっているのです。

今までの飲食店は「ゴーストキッチン」に変わる?

それでは、飲食店の姿は今後、どうなっていくのでしょうか?

「家飲み」に代表されるように、コロナ禍を潜り抜けたとしても、そのまま元の姿に戻ることはないでしょう。

存続していくなら、変化する必要があります。

そんな中、お店の業態を変える飲食店が増えています。
ひとつの新業態を取り上げてみると――。

・お店を宅配専門に特化して経営する「ゴーストキッチン」
・レンタルスペースのキッチンを複数の料理人が利用する「クラウドキッチン」「シェアキッチン」

どちらも、顧客が飲食する場から調理するための「キッチン」にお店は存在価値を変えたのです。

飲食店をキッチン専門にすれば、経費90%を55%にできる

従来の飲食店のビジネスモデルは、以下のようなものでした。

・1000万円以上の初期投資(借り入れ)が必要
・借り入れを返済しながら、人件費、家賃、食材費を支払う
・残った営業利益は10%弱

これを宅配専門の「キッチン」に特化すれば、

・ホールスタッフの人件費を減額できる
・必ずしもいい場所である必要はないので、家賃を減額できる
・集客のための宣伝費を減額できる

など、経費を削減することができます。

うまく経営すれば、食材+家賃+人件費のシェアが売上の55%にできると言います。

課題は、ウーバーイーツなどの宅配プラットフォーマーの検索で、上位に表示されるか否かが集客のカギになり、宅配プラットフォーマーに支払う金額もばかにならないことです。

いずれにしても、飲食店自体の業態を見直す時代が訪れたということです。

仲間と楽しいひと時を過ごしたいときは「外飲み」を、自宅でひとり気ままな時間を過ごしたいときは「家飲み」を・・・できることなら、どちらの時間にも、馴染みのお店が関わっていてほしいと思う今日この頃です。

コロナ禍は有無を言わさず、変化することを要求しているようです。

◇【コロナ禍がもたらした「家族団らん」の魔法の時間はコレだ】のブログはコチラから↓