会社の売り手と買い手があっという間に距離を縮める方法、言葉とは?

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売却候補先の社長H氏との交渉当日――。

私とHの交渉は,本腰を入れる段階に入りました。

ここ3年間のB/S、P/Lは、交渉前に渡しておこう。

「お互い、無借金なんだね」

Hは、今までの当社の貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)を眺め、口火を切りました。

その顔に笑みが浮かんでいます。

Hの隣りの席には、相手方の顧問税理士が座り、私の隣には、私の顧問税理士、Yが控えていました。

私は、Yのアドバイスで、ここ3年間のB/SとP/Lを事前にHに渡していました。

「バブルで会社を潰しかけたからね。もうこりごりと思って、借金はしないことに決めたんだ・・・もちろん、簿外債務もないしね」

私は、けん制の意味も込めて、そう答えました。

Hは一瞬、まじめな顔で私の目を覗き見・・・笑顔に戻っていました。

「がくさん、25年間、コツコツ頑張ってきたんだね」

Hは空間に目を向けました。自分の過去を振り返っているようでした。

それぞれの強み、一緒になるメリットを確認し合おう。

「Hさん、お互い手を組むメリットを確認しよう」

私は、交渉に入ることにしました。

まずは、両者が一緒になることで、

・大手仕入れ先の要望に応え、
・さらなる利益体質になることの確認を行いました。

今回の件のきっかけになったことだっただけに、難なく両社は承認。
両税理士とも、頷き合っていました。

そして、当社の強みの確認。

・長年に渡り、たくさんの優良顧客と契約していること。
・社員が成長し続けていること。
・無借金であること。
・理念経営を実践していること。
・長年に渡り、仕入先の評価を受けていること。(仕入先との付き合いは、H社より長かった)

さらに、H社の強みの確認。

・取引先の顧客数では、東海地区の3本の指に入ること。
・社員が成長し続けていること。
・無借金であること。
・Hの数字の強さには定評があること。
・仕入先からの要望に常に前向きに取り組んできたこと。

いくつかは共通し、いくつかは、お互いを補強するものでした。

売る側は高く、買う側は安くというのが本音。それは当たり前の経済原則だ。

「これは、かもしれないね」

Hからの承認と取れる言葉に、私は頷きました。

「提示額を聞いてもいいかい?」

Hが身を乗り出してきました。

出会って間もないビジネスライクな関係ならば、生々しい話は2回目か3回目に回した方がいいでしょう。そして、お互いを知るためにフランクな話に終始すべきでしょう。

でも、二人は長年の知り合いであり、趣味仲間でもあったので、話は早く、ストレートな方がいい・・・そこは阿吽の呼吸でした。

そばに控える二人の顧問税理士が、真顔になった瞬間でした。

現在価値+将来利益5年分、社員・顧客価値を含めたのれん代、合せて、〇〇〇でどうだろう」

私は、根拠を示し、売却額を提示しました。

「それは、どうかな?」
Hの顧問税理士がまず反応してきました。

「こちらでも試算したのですが、結構ギャップがあるようです」

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