売り手も買い手も、交渉の時は対等。「相手の弱みを見抜け!!」
世の中の経済活動は、総じて買い手に有利です。
買う方がお金を払うのですから、「買って頂く」という受け身の心理が、どうしても売却側には作用してしまいます。
そして、売るものに自信がなければ、安値で提供したり、良くないことですが、誇大広告や虚偽広告によって、高値で売ろうとしたりします。
会社の売買も同じです。
「買って頂く」という心理が働くのは当然です。
・ただし、受け身でいてはいけません。
・卑屈になってはいけません。
・最初から妥協の精神で臨んではいけません。
何でもそうですが、売買は成立するまでは対等なのですから。
そのためにも、交渉に臨む前に、自社の強みと弱みを整理し、どんな質問や提案が出てきても、すぐ答えられるように、事前準備をしておきましょう。
対等でいるためのひとつ目の法則が、「相手の弱みを見抜け」という法則。
弱みを突いて有利に話を進めよ、ということではありません。
・相手の弱みは何か、その弱みの裏返しが、こちらの強みであるかどうかを知ることです。
・逆に、こちらの弱みが、相手の強みであるかも照合しておこうということです。
私の顧問税理士のY氏が指摘してくれたように、私は理念の人。売却先の社長、O氏は数字の人。
2者を合わせれば、理念と数字の両方に強い会社になります。
(1万円札になる渋沢栄一氏の『論語と算盤』に著されているように、理念と数字の両輪が上手く回れば、強い経営体質を持った会社ということになります)
想像してみてください。
相手の弱みが売却側の強みであるならば、買う側は、買収後の会社の価値が上がると算盤を弾くはずです。
自社の強みを再確認し、自信を持って交渉に臨みましょう。
社長である自分が主導権を握ろう。
M&Aのプロには、2種類の方式があります。
アドバイザー方式と仲介方式です。
アドバイザー方式は、どちらかの立場に立って、売却か買収を成立させる方式です。売却側のアドバイザーであれば、売却側から報酬を受け取ります。
弁護士との契約に代表される方式です。
(民法108条で、同一の法律行為については、双方の代理人になることは禁止されています)
仲介方式は、売却側と買収側双方の間に立って、売買を成立させる方式です。
両者から報酬を受け取る、不動産契約に代表される方式です。
(民法108条の限定事項として、本人があらかじめ許諾した行為については認めています)
どちらの方式がいいかどうか、細かい契約事項はどうかなどは、他のたくさんのM&A本に書かれていますので、ここでは触れません。
ここに取り上げた理由は、社長である自分が、全ての主導権を握ろうと言いたかったからです。
社長であるあなたに、こんな経験はありませんでしたか?
・・・ある経営コンサルタントに、会社の生産性を良くするためのコンサルをお願いしました。一任すれば大丈夫と、あなたは高いコンサル料を支払って、PDCAを丸投げしました。
さて、どんな結果が待っているでしょうか?
私の経験則によると、成功した事例は一つもありません。
上の例で理由をピックアップしてみます。
・社長が経営コンサルタントに丸投げし、責任を回避したから。
・経営コンサルタントは外部の人で、経営責任は問えないから。
これが全てです。
社内の幹部や社員の目には、どう映るでしょうか?
社長が、自分の権限をコンサルタントに委譲したように見えます。
社長は経営責任から逃れることはできません。
責任ある社長が、責任のない外部の経営コンサルタントに権限を委譲して、うまくいくはずはありません。
社長の代わりに社長をやるようなもので、社員がついてくるとは考えられません。
結果、社内の生産性は何も変わらないか、生産性が低くなっているかのどちらかでしょう。
後に残るものは、社内の混乱と、漂う不信感。
社長の目の前には、実現しなかった生産性を高めるためのうんちくを盛り込んだ計画書が置かれただけです。
経営コンサルタントを批判しているわけではありません。
社長の丸投げがいけないのです。
「プロは心強い相棒と思え!!」
タッグを組んで、コトに臨もう。
会社の売却も同じです。
仲介方式であろうが、アドバイザー方式であろうが、丸投げしたら失敗です。
主人公はあくまで、社長である自分です。
前項にあるように、売却先と対等に渡り合うのは、あくまで自分自身です。
でも、プロは必要ですね。
なぜプロが必要なのか、整理してみましょう。
・専門的なことや資格が必要なことは、自分にはできない。
・手続きや資料の作成など、煩雑なことに時間を取られたくない。
基本、これだけです。
・社長本人と、相棒になってもらった大事な人たち(私の場合は、顧問税理士、ベテラン社員、仕入先の相談者)が主導できるはずです。
・契約書類に関しては、顧問弁護士や社労士、お金に関しては顧問税理士、というように、実務のパーツパーツを頼れる相棒に頼むのがベストです。
(私の場合は、終始、顧問税理士Yが相棒でした)
誤解を恐れずに言いますと、プロを先生ではなく、現実的な「便利屋」と見立てて、おつき合いしようということです。
自分のできないこと、お願いすることは何か、相棒の契約内容と実務範囲を決めればいいのです。
その段階で、プロの選定に入る方がいいかもしれませんね。
(私の場合は、仲介やアドバイザーとの契約は発生しませんでした)
自分自身が主人公でプロを相棒にした場合、どうなるか――。
・納期設定が早まります。
・支払う報酬が、比較的少なく済みます。
・売却の成立は社長自身の手腕です。
アドバイザー、仲介を活用しちゃいけない、と言っているわけではありません。
主人公は自分、実務はプロというタッグを組んで、ことに臨もうということです。
ところで、社長自ら動いて、売却先を見つけるためにはどうしたらいいでしょうか?
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