「会社を廃業したら先祖に申し訳ない」
私の周りには、100年以上続く会社の社長が結構います。
多くは、70代の団塊の世代以上の社長です。
彼らに、「会社を売るって、考えたことないですか?」と聞くと、
「とんでもない。そんなことしたら先祖に申し訳ない」
ほとんどの社長がそう答えます。
「後継者は決まっているんですか?」
「・・・」
中には押し黙ってしまう社長もいます。
老舗企業の○代目社長は、
「自分の代で会社を畳むわけにいかない」
と、早くから次の代の後継者候補を決める傾向があります。
それが息子、娘、娘婿、番頭格のベテラン社員というケースが多いという特徴がありますが、最近では継ぎたくないという人が増えています。
社長が70代以上の会社が一番業績が悪い理由。
「仮に、後継者ができなかったら、どうするんですか?」
押し黙った社長に突っ込んだ質問をすると、
「・・・何とか探すか、育成するしかない」
不安な顔を覗かせながらも、そう断言するのです。
そして、会社の業績は年々落ち込んでいっているようなのです。
社長の年代別の業績推移を比較すると、70代以上の世代の業績が一番思わしくないのです。
年齢を重ねると、変化を嫌うようになり、新しいことに着手する熱量が小さくなるものです。業績の落ち込みは、それによるものと考えられます。
大先輩とはいえ、親しい間柄だったので、私は自分の考えを遠慮なしに、ストレートに口にしてみました。
「業績がだんだんシビアになってきていますから、手をこまねいていると会社を閉じることになりませんけど、それでいいんですか?」
「それは絶対だめだ」
社長は眉間にしわを寄せ、声を荒げて抵抗してきました。
廃業が、自分と周りにもたらすマイナス面とは。
「思い切って、会社を売却したらいかがですか?」
私は、そう打診してみました。
その理由が以下です。
・会社の将来は、売るか閉じるかの2択しかない。
後継者に引き継ぐのも、株を譲るわけだから、結局は売ることに他なりません。
・売却先と握手することも、事業承継のひとつ。
後継者が、親族や社員などの身内から第三者の会社・経営者に移っただけです。
売却先は、もちろん、業績を回復させる力のある相手を選ばなければいけませんが・・・。
・廃業したら、家族、社員、取引先、仕入先、銀行に迷惑がかかる。
外に売却できれば、結果、周りに迷惑をかけることはありません。
・廃業は、手続き上、手間暇かかり、清算してもキャッシュがほとんど手に入らない。もしくは負債を背負う。
将来の見込資産があれば、それが評価され、売却した方がキャッシュが多く入ってきます。
「どう思いますか?」
一拍置いて、私は彼のリアクションを待ちました。
「やっぱり身内にバトンタッチしていきたいんだ」
身内に事業承継していくことにこだわっていたというのが本音でした。
あと10年踏ん張るか、短期で幸せをつかむか。
ただ、私の次の言葉で、彼はもう一度考え直すことにしたようです。
「後継者が身内にいたとしましょう。10年育成する覚悟が必要です。その間、業績はどう回復させますか?社長がいつもやりたいって言ってたこと、10年間お預けになりますが、それでいいんでしょうか?」
まだ結論は出ていませんが、社長が持った危機感は、きっと将来の扉をあけるエネルギーになると信じています。
この「身内への事業承継のこだわり」、100年企業と程度の差こそあれ、会社を設立して10年、20年、30年の会社の社長でも持っています。ある種の呪縛状態にあると言ってもいいでしょう。
昔は「転職」にはマイナスイメージがありました。
「会社を売ること」にも、同じようにマイナスイメージがつきまとっているのでしょう。
でも、今や「転職」は、生きる上でのメジャーな手段になっています。
●後継者への事業承継は、会社を売ること。違いは、身内に売るか第三者に売るだけです。
●身内への承継は最低10年かかると覚悟しましょう。
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