30歳で起業する際、私は両親から大反対されました。
「3カ月以内に300万円の資金をつくれなかったら起業をあきらめる」
そういう約束をし、条件付きの承諾を得ました。
50歳の時、5年の間に幹部候補に事業承継をしようと試み、その結果、5人の社員が会社を去っていきました。そして、1年という期限をつけて第三者に事業売却しようと動き出しました。
起業を考えている人(入口)、事業承継を考えている人(出口)の中で、前を向けずに悩んでいるあなたの参考になれば幸いです。
起業するかどうかは、「周りの反対」がバロメーターになる
ある日、私が勤める銀座の職場に、両親が突然訪ねてきました。
受付スタッフに用意してもらった部屋で両親の顔を見た時、職場までわざわざ出向いて来るなんて、親は心から独立に反対していたんだと、思わず涙が出そうになりました。
振り返れば、両親は、私の直属の上司を通して、ある時は母の弟=叔父を通して、私に独立をあきらめるよう、再三、説得を試みてきました。
それでも、かたくなな息子を見かねて、最後の説得のために、職場に飛びこんできたのです。
独立に反対するのは、両親としては当然だと思っていました。
その胸の内は、痛いほどわかります。
失敗して路頭に迷わせたくない——その1点の親心に尽きます。
その両親から受け継いだ、決めたらテコでも動かない息子の性格を、これほどまでに持て余すとは・・・きっと、親にはそう思わせてしまったのでしょう。
反対されればされるほどやりたくなる・・・そんな経験ありませんか?
反対されてでも、やりたいかどうかの意志を試されているといってもいい。
「起業するまでにいくら用意できるか」は商売のバロメーターになる
「僕は独立するよ。父さん、母さん」
私の言葉に、しばらく沈黙の状態が続きました。
父が沈痛な顔をしています。
「わかった」
父が承諾した・・・かに思いました。
「でも、条件がある。生活費とは別に、事業資金として、300万円の資金が確保できたら、やってみなさい」
条件つきの承諾でした。
私の意思が変わらなかった場合の、あらかじめ考えてきた条件のようでした。
「3か月以内だよ。ムリだったら、あきらめなさい」
母が2つ目の条件をかぶせてきました。
それは、お金と時間で、私の覚悟を見極めようとするかのようでした。
3か月後、私は、300万円を両親の前に置きました。
「応援しよう!」
私は、父と母の久しぶりの笑顔を見ることができました。
それは、決して、あきらめのにじんだ笑顔ではなく、子供を包み込むような、慈しみの笑顔でした。
覚悟と期限とお金。起業と事業承継の2大事業に欠かせない3つの資源
あれから32年。
両親はこの世にはおりませんが、私にとって、世界一、いや宇宙一の応援団は両親だったことは間違いありません。
事業承継する時も、私が50歳の時から5年の間に5人の後継者候補が会社を去っていきました。
10年かけて育成すべきところを短期間で行ったことが、その原因だったと反省しています。リーマンショックのあおりを受けて業績が急降下。その焦りも手伝ってのことでした。
この事業承継の失敗からどう這い上がったらいいか、相当悩みました。
その時、起業する時の親の慈しみ深い笑顔を思い出したのです。
「そうだ。期限を決めて第三者に会社を売却しよう」
私はそう決めました。
そして、予定通り1年後(今から6年前)には成約することができました。
・家族や社員、取引先などの大切な利害関係者が幸せになること
・自分自身の次の人生がプランニングできていること
その思いをエンジンにして、自分が中心となって動いたところ、予定通り1年後に第三者に事業売却することができました。
そしてこの度、私以外の後継者のいない中小企業社長を対象に、「愛の会社エグジット 売り手も買い手も幸せになる事業売却」というビジネス本を出版するに至りました。
私は、自分の体験を踏まえ、2つの学びを得ることができました。
・たとえ反対されても起業する覚悟があるか、いったんは失敗をしても、かたちを変えて事業承継する覚悟はあるか
・期限と目標金額を設定して起業の準備ができるか。事業承継することができるか
起業と事業承継は、経営者としての2大事業です。
覚悟と期限とお金、この3つを念頭に、ことにのぞみましょう。
そして、本当の「味方」を得てください。
私の場合、それは紛れもなく私の父であり、母でした。
あなたの場合はどなたですか?
悩んでいるなら、相談を持ちかけてみてはいかがですか?
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