・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・私が会社を第三者に事業承継したのは会社を経営して25年経った時でした。
その間、会社を倒産の危機に追いやったことが2回ほどありました。
応援してくれていた両親が立て続けに他界しました。
複数のベテラン社員を後継者として育成しようとしましたが、ことごとく失敗しました。
そして、ふとしたことがきっかけとなり、1年後には会社を売却することになったというわけです。売却に至るまではさまざまな葛藤がありました。
今回は、シリーズで、そのてんまつを小説仕立てでご紹介します。
読んでいただけたら幸いです。
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「会社は大切な子供」。終始その思いで交渉に臨んだ
私は今までの経緯を振り返ってみました。
・リーマン・ショックから立ち直る中で持ち上がった、仕入れ先からの会社の改革要請。
・「仮に、会社が一緒になったら・・・」から始まったHとの話し合い
・自分のプライドと戦った1カ月間
・ベテラン社員3人との話し合いを重ねて、会社エグジットの意思決定するまでの2カ月間
・顧問税理士と事前準備をした1カ月間
この間、正味4カ月間かかっていました。
そして、Hとの本格的な交渉が始まり、第1回目の交渉で売却額の提示をしてから、さらに3カ月間。
私とHとの間に基本合意が交わされるまで7カ月程度の時間を要しました。
(長かった)
それが正直な気持ちでした。
途中、Hからの何度かの金額提示に、妥協しそうになった時もありました。
その都度、顧問税理士のYが励ましてくれました。
「会社は大切な子供ですよ」
金額交渉が妥結するまで、私はただ待っていたわけではありませんでした。
そのために、私は2つのことを実行しました。
ひとつ目は、お互いの幹部と食事会を実施したこと。
社員という人材価値を膚で感じてもらいたかったからです。
これは、むしろ私にとってプラスに働きました。
Hの会社の幹部の一人に、「社長に長年ついてきた理由は?」と聞くと・・・。
「入社したての頃のことです。あるトラブルで、社長に同行してもらった時、僕の隣で、ずっと謝罪してくれたんです。もうあんなことはさせたくない、一生ついていこうと思ったんです」
幹部の純真さに触れた瞬間でした。
(いい幹部社員だ)
二つ目は、当社の大手取引先10社の取引データを提示したこと。
長年に渡る顧客資産を評価してほしかったからです。
その中の2社は、上場した時に株を購入し、2社とも株価が急伸していることを強調したのです。
そんな活動を通して、Hは会社の将来価値を評価してくれたのです。
合意金額は、私の提示額の約8割で着地しました。基本合意成立です。
私は、次に会うまでに、契約書をこちら側で作ることを提案。Hは、それに同意してくれました。
でも、また暗礁に乗り上げる事件が発生したのです。
(続く)
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