国税庁+年金機構=「歳入庁」ができれば、消費税は4%下がる!?

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財務省が消費税を上げる理由は、ブラックボックスを開ければ分かる。

『2040年の未来予測』(成毛眞氏著:日経BP刊)、2回目のご紹介です。
今回はchapter2の「あなたの不幸に直結する未来の経済――年金、税金、医療費」の中で気になった税金と保険料のブラックボックスについて。

ひとつ、あなたに質問です。

あなたは、社会保険料の徴収・年金給付と税金の徴収は同じ省庁で行っていると思いますか?

答えはNOです。

社会保険料の徴収・年金給付は、厚労省の大臣直結の「日本年金機構」が行っています。一方、税金の徴収は、財務相が管轄する「国税庁」が行っています。つまり、社会保険料は日本年金機構が、税金は国税庁が徴収しているわけです。

この一本化されていない縦割り行政によって、何が問題になっていると思いますか?・・・保険料の徴収漏れが多いことです。

その額は、5兆円とも10兆円とも言われているようです。
消費税に換算すると、何とそれは2%、4%に匹敵する額になります。
これが徴収できていれば、ひょっとしたら消費税を上げることはなかったかもしれませんね。

なぜ、徴収漏れが起こるのか?

税務署員がある企業に調査に入ったとします。
当然、最終的には、適切な法人税を納税しているかどうかということが調査の主眼になります。

調査中に、保険料の未納を発見したとするとどうするでしょうか?

縦割り行政なので、日本年金機構と連携することはあまりなく、そのままというケースが多くなってしまうようです。それが積もり積もって5兆円、10兆円となっていくわけです。「ちりも積もれば山になる」とは、このことですね。

成毛氏が本書で書いている通り、国税庁を財務省から切り離し、年金機構と一体化し、「歳入庁」をつくれば、徴収漏れはなくなるはずです。

私の記憶によると、かつて「歳入庁構想」が2度ほど検討されたことがありましたが、実現することはありませんでした。なぜだと思いますか?それは、財務省が大反対したからです。

財務省にとっては、国税庁の人事権を持つことによって、国全体のお金を押えていることになりますが、それを離してしまうと、存在感が小さくなってしまうからです。この、国民を無視した省庁権限を行使する行為、とても許せるものではありません。

しかも、もっと怒れることがあります。

なぜ財務省が率先して消費税を上げようとするのか・・・よく考えてみましょう。歳入庁ができれば保険料の漏れが亡くなり、税収が消費税にすると2~4%分増えることになる。それを嫌がる財務省が、国民の社会保障費の不足分を補うために消費税を上げてきたのです。

自分の権利を守るために、してはいけない本末転倒のことをあえてしている・・・そんな構図が浮かび上がります。「歳入庁」は、アメリカを初めとする先進国のみならず、旧共産圏でも、保険料と税金のふたつを一本化していることは常識のようです。

10万円の現金給付でストレスを抱えない、ただひとつの方法はコレだ。

もうひとつ、国税庁と市町村がうまくつながっていないことによって、最近あなたが身近に経験したストレスを思い起こしてみましょう。

それは、新型コロナの10万円の現金給付です。地域によってバラバラの給付。あなたもストレスを感じたのではありませんか?

これは、国税庁は「税金を取るところ」、市町村は「個人所得や財産などの情報を収集し、税を課し、必要に応じて給付も行うところ」だからです。一気通貫してスピーディに業務が行われないのです。

アメリカのように、納税者番号である社会保障番号と銀行口座が紐づけられていたら、2週間程度で給付金が振り込まれます。「歳入庁」のある国は、ほぼそうなっているようですね。

やはり、マイナンバーカードは必要ですね。

成毛氏が書いているように、「マイナンバーが 銀行口座と紐づけられれば、お金の流れが見える化され、所得の捕捉率が高まります。そうすれば、数兆円規模の増収につながる可能性が高い」となります。

個人情報の問題はあるかもしれませんが、コロナ禍や天災に見舞われた時、国民を守るためには、「歳入庁」の発足は必要不可欠になってくるのではないでしょうか?

案外、総理大臣のいちばん大事な仕事はこれかもしれません。財務省を変えることのできる人・・・そういう政治家が首相になることを願う次第です。

成毛氏の本は、国の財務のブラックボックスを明らかにしてくれます。

ご参考までに。