あなたが起業して会社の社長になるにしても、起業後しばらくは、現場の営業を兼務することになりますね。
釈迦に説法かもしれませんが、営業の新人に返ったと思って、ご一読ください。
相手は、自分の商品を買ってくれるマシンではない。
私の会社は、企業の従業員の採用をアシストする会社でした。
かつて、入社2年目の営業社員とやり取りした時のことです。
「〇〇店長がこの前、人材採用したいと言っていたのに、それ以来連絡ないんだよ、まったく!」
メンバーのひとりが、他のメンバーに愚痴を言っている場面に遭遇したことがありました。
〇〇店長は、地元の飲食チェーン店のベテラン店長。
私は言葉や表情に出かかった言葉を引っ込めて、メンバーに質問してみることにしました。
まずは、自分から店長に会いに行っているのか聞いてみたところ、連絡を取ったり、直接会いに行ってはいるものの、未だ接触できていないという話。
次に、その店長がどんな仕事をしているか質問したところ、しばらく返答はありませんでした。
やっと出てきた言葉が、「人材採用の責任者です」という言葉。
「それじゃあ、店長の最大のミッションは何だと思う?」
「・・・お店の利益を上げることです」
「利益を上げるためにはどうすればいいと思う?」
「・・・優秀な人材を採用することです」
相手は仕事人である前に生活者である。
思わずため息が出てしまったが、ここがメンバーが学習するベストタイミングと捉え、気分を新たに、私は次のことを伝えることにしました。
店長が利益を上げるためには、来店する顧客の数を増やし、リピート客に変えていく必要がある。そのためには、店長にどんな時間が必要になるのか――。
1.人気のメニュー開発をする時間。
2.宣伝広告の内容と方法を考えて手を打つ時間。
3.サービス力をつけるために、メンバー教育をする時間。
4.社長や上司との報告・連絡・相談業務を行う時間。
5.そして、人材を増員・補充するための時間。
「この5番目に君は関わっているわけだ。君と会って話をする時間を捻出するのは、〇〇店長にとって大変なことなんだ」
(もし1~4の情報を他社の営業スタッフにキャッチされたら、〇〇店長は、君からその営業スタッフに採用窓口を変えるかもしれない)
そんな危惧を抱きながらも、口には出さず、私は次の5つのことを伝えました。
・相手の仕事全体を把握すること。(1~5)
・相手の悩みに寄り添うこと。
・相手を、自分の商品を買ってくれるマシンとは、決して思わないこと。
・相手は、家族と食事したり、休日は趣味に興じているだろう生活者であること。
・気が合うなら、仲間としてつき合いたいと相手が思っていること。
つまり、相手は、仕事人であり、生活者であり、悩みを持つ人間臭い存在。
そして、君自身も同じ人間で、仲間になる可能性のある存在なのだと・・・。
彼は1年後、そのチェーン店のオーナーから全店の人材募集を一任されるほど、顧客に頼られる存在に変わっていきました。
起業して社長になれば、仕事人+生活者=人間そのもの同士のおつき合いになります。原点回帰しておきましょう。