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起業して失敗したらどうしよう・・・起業後のことを考えてワクワクする一方、時にはそんな悩みが頭をよぎること、ありませんか?
この悩みは、起業を考えた人間は誰もが持つ正常な悩みです。
まず、そう思ってください。
大手メーカー社長が、トップの自覚を持った瞬間は「リコール問題」
ひとつの大きな事例をご紹介します。
世界的大手メーカーの社長が、社長に就任するまでは、ある悩みで心が落ち着かなかったといいます。
(果たして多くの従業員と顧客に信頼されてリーダーシップを発揮できるのか・・・)
これが、その悩みでした。
就任して間もなく、社長は大きな事件に遭遇してしまいます。
リコール問題です。
新任社長は、その問題の全責任を背負い、渦中の中で、苦痛と忍耐を迫られます。
当時を振り返り、社長はこう思ったと言います。
——あの時に社長の自覚が芽生え、自分だからこそ、これからの会社をリードしていけるのだと・・・。
最悪の時に辛抱して乗り越えれば、腹を据えて経営に当たれる、ということです。その時の経験が、同社をさらに躍進させる原動力になったことは間違いありません。
ウイルス問題を、起業のステップボードにする。
今私たちは、新型ウイルス問題よって、不安な毎日を過ごしています。
3つほど上げてみると・・・。
・国も民間も、試行錯誤しながら、さまざまな予防策を講じ、実行に移していますが、うまくいくこともあれば、修正を迫られることもある。
・企業の多くは業績ダウンを余儀なくされ、平常時よりも廃業する会社が増え、それに伴い、失業者が増える。
・日本経済が冷え込むことは間違いない。
ところが、逆の現象もあります。
こちらも3つ上げてみると・・・。
・自宅での「巣ごもり消費」をとらえたネットビジネスや小売業は、平常よりも業績を伸ばしている。
・テレワークなどの働き方改革によって、時間給型から成果型の待遇に変わる可能性が濃くなった。
・副業が増え、起業を考える人間が増えた。
つまり、コロナ問題は、マイナス面だけではなく、この危機を乗り越えれば、今までにはなかったウエルカムの世界も広がっているということなのです。
歴史が変わる時、生きる価値観が変わる時は、一見最悪のことが起きています。
でも、振り返ってみれば、その後にやってくる時代は最良になっていることが多いのです。
戦後の経済成長がそうですし、その中で生活を便利にする新しい商品がどんどん発明されてきたのが、ひとつの例です。
バブルとリーマン2大不況が、私を社長にしてくれた。
私の話ですが、起業時にさか上ります。
調子のいい時は有頂天になるものです。
バブルが弾ける前に起業したので、いつまでもこの状態は続くもの——ついついそんな幻想に取り憑かれていました。
私は、起業後の2年間、黒字で調子づいたのをいいことに、業界の中で地域ナンバー1になるぞと、鼻息を荒げ、有頂天になっていました。
背後にバブルの影がチラついているのに、これはいけるぞ!と、根拠のない自信にみなぎっていました。
当時を知る人は、少なからず、そういう根拠のない自信に動かされていたのではないでしょうか。
世の中はバブル経済華やかなりし頃、このまま日本の経済成長は止まらないと・・・。
私は事業拡大するために、社員を倍増させようと、事務所をもう1フロア借りました。
念願かなって、銀行からの多額の融資も受けていました。
当時を振り返ると、入るお金と出ていくお金にタイムラグがあるとか、人件費が経費の中で一番比重が高いとか、分かってはいても、何とかなるさ!という安易な感覚で、明らかに危うい経営をしていました。まさに、どんぶり勘定でした。
経営者として守らなければいけないセオリーを身につけずに起業したツケは突然やってきました。
バブル経済の崩壊です。
・会社の業績は急激に悪化し、ひとりを残して、全員去っていった。
・残ったのは、がらんとした事務所二つと、借金だった。
・売上が3分の1まで落ち込み、その後2期連続の赤字を計上してしまった。
一度は会社を畳み、ゼロからサラリーマンとしてやり直そうとも考えました。
最悪の時は最高を目指そう。
私はしばらく、情けない自分を嘆き、去っていった人たちを恨んだりしました。
それでは何も解決しないとわかっていながら、なかなか前に進むことができなかったのです。悲劇のヒーロー病にかかっていたのかもしれません。
これでは逆効果です。
私は思い余って、親に相談を持ちかけていました。
そして、親に「サラリーマンに戻れ」と言われた時、
カツーン!・・・という音が聞こえたような気がしました。
(これは底を打つ音だ)
私は開き直りました。
親との約束で、6か月の期限付きで経営を続けることにしました。
自分以外にこの苦境を抜け出せる人間はいない——当たり前のことですが、そのことに初めて気づいたのです。
開き直ると言っても、決して自暴自棄になることではありません。
今が最悪、上を目指して昇っていく構えが「開き直り」だと思いました。
(体ひとつあれば大丈夫。中途半端な気持ちで会社をつぶすことだけは止めよう。最悪の時だからこそ、最高を目指そう)
最良の時は最悪に備えよう。
24時間体制で仕事をし、必要最低限以外のものにはお金は投じず・・・おかげさまで、半年後に単月黒字を計上し、業績が戻ってきてからは普通の生活に戻し、5年で借金を完済することができました。
業績向上に伴い、新しいメンバーも増やすことができました。
緩やかに日本経済が成長を取り戻していった時、低迷していた求人広告の業界は、成長業界に変貌していました。
私は、3つのことを心に刻みました。
・ムリしてまで業界ナンバー1を目指そうとは、もはや思いませんでした。
・1社1社の顧客に満足を提供していけば会社は長く続く——そう思うようになりました。
・会社をつぶさないことが会社を成長させる原点であること、身の丈で経営することが最善であることを、身をもって知ったからです。
量から質への転換でした。
私は、どうやら「成長」の意味を取り違えていたようです。
そして、こう肝に銘じました。
(最良の時は、最悪に備えよう)
その後、リーマン・ショックにより、再度業績が落ち込みましたが、会社を維持できたのは、この思いがあったからです。
会社経営の場合、私ひとりの人生の枠内では済みません。
家族・社員・取引先、金融機関などの利害関係者を巻き込んでしまいます。
良くも悪くも、その人たちの行く末を握ります。
会社を長く経営できる秘訣は、最悪と最良の中間に自分を立たせ、経営のかじ取りができるかどうかです。
バブル・ショックの経験は大きな学びでした。
立ち直ることができたから言えることですね。
経営者としてあなたに身につけてほしいいちばん大きな法則は、この「最悪と最良の法則」です。
最悪と最良の法則を実行する3つの心構え
この法則を実行する上での心構えと行動原則を、3つお伝えします。
・最高の業績の時はネガティブに、最悪の業績の時はポジティブに⇒経営計画に反映。
・自社のため(=自分のため)に儲けようとしないこと⇒社員と取引先の存在が第一義。
・社会のために会社を存続させる意思を持つこと⇒経営理念を創って実行。
——心というものは、それ自身一つの独自の世界なのだ——地獄を天国に変え、天国を地獄に変えうるものなの——(ジョン・ミルトン/イギリスの詩人)