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ベテラン社員の賛成で、会社売却の意思が固まった。
会社の売却が、本当に社員の成長のためになるのか――。
私は、経営渉外スタッフのOにファシリテーター役をお願いし、3回の会合を通じ、3人のベテラン社員から本音を引き出すことができました。
そして、会社を売ることが一番の選択肢であることが分かったのです。
まだこの当時、H氏の会社が売却先と確定していたわけではありません。
基本合意に至るか至らないかの段階でした。
「お客様のそばで自己実現」する社員の幸せ。それが会社を売却する第一目的だった。
かつて創った【お客様のそばで自己実現】という経営理念は、お客様の成長と共に、社員の成長をかなえることが目的のひとつでした。
つまり、顧客と社員の成長は、会社運営の両輪だったのです。
・・・私は、不思議な感覚にしばらく捉われていました。
かつて創った経営理念の出口(エグジット)が、会社を売却することだったなんて、かつては考えもしないことだったからです。
3回の社員との会合を経て、これでHが承諾すれば、基本合意に入れます。
そして、交渉、その前の事前準備にステージが移ることになります。
まだ、どうなるかは分かりませんでした。
ただ、仮に決裂したとしても、もう決めた道なのだから、私は次の売却先を探すことになる・・・そう腹を据えることにしました。。
社長スカウトの対象者は、両者とも一致していた。
「そうか・・・もちろん、僕の方もOKだ」
Hは、私に握手を求めてきました。
「詳細はこれからだね。できたら、半年以内に決着つけよう」
私はそう答え、握手に応じました。
――これで基本合意は成立です。
「ところで、Oを社長としてスカウトしようと思っているんだが、H氏はどう思う?」
・Oの協力を得て、会社の事業承継の道を決めた私にとって、Oは必要不可欠な存在になっていたのです。
・何よりも、私の会社同様、Hの会社も仕入先が一緒であり、経営渉外スタッフもなんと、同じOだったのです。
「もちろん、異論はない。でも、来てくれるかなあ?Oは人気が高いから」
Hは即答してくれました。それほど、HもOを高く評価していたのです。
そして、Hの懸念は私の懸念でもありました。
彼自身も、50歳を前に、次の道を模索しているようでした。
いくつかの会社からのオファーも受けているようでもありました。
Oが自分から口に出すことはありませんでしたが・・・。
最初のオファーに対しては、ひと言で断られ・・・。
「その申し出は、お断りします」
馴染みの居酒屋でOをスカウトしてみたところ、私の話の後、ものの5分の時間を挟んで、彼は断ってきたのです。
「取締役営業部長からスタートし、数年間のステップを踏んで社長になってほしい」
それが私からのオーダーでした。
Oは、そのオファーに応じませんでした。
私は、その後、三顧の礼を試みることになるのですが・・・。
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