「この仕事を、権限を持たせてやらせてほしい」と提案し、経営者がそれをGOすれば、経営者に近い仕事ができる。その力を、私は「サラリーマン力」と呼び、それを「起業力」に高める必要がある・・・前回、そう書かせていただきました。
起業するには、サラリーマン時代に具体的な起業学習をしておくことが肝心です。
その最たる起業学習が「トップアプローチ」なのです。
前回に引き続き、この話題に触れたいと思います。
あなたのアプローチ先の社長は、最終的にすべてを自分で判断し、決断することのできる権限を持っています。
なぜなら、社長は、
① 決裁権を持ち(人事、予算など)、
② いちばん大きなお金を動かし、
③ 転勤、退職などがなく、いちばん長くおつき合いできる人だからです。
あなたが社長なら、お互い、社長同士、立場は一緒です。
親しくなれば、先輩社長としてアドバイスをしてくれます。
良好な関係を築くことができれば、あなたのメンターになってくれるかもしれません。商談を持ちかける相手は、社長がベストです。
相手先の社長から社長業を学ぶことができますし、起業後の自分をイメージする訓練にもなります。トップアプローチは大きな起業学習なのです。
まずは、社長との信頼関係をつくることですね。
商談が成立すると、通常の担当窓口よりも、早期に、大きなお金を手にすることができます。そして、後々長いおつき合いができます。
もちろん、会う前には、ホームページやネットから、相手先の社長や会社の情報を極力たくさん入手しておくことを忘れずに。
社長はシンプルでナイスな質問を待っている。気分よく夢を語ってもらえたら、商談8割成立。
ひとつの例を示しますね。
私が求人広告の代理店の社長だった頃のお話です。
「S社の社長にアポイントが取れましたが、どんな話をしていいのか分かりません」
女性営業スタッフのIから、ある日、相談を持ちかけられました。
「話はしなくていいよ。聞けばいいんだよ」
私は、Iにそんななぞかけをしてみました。
・・・しばしの沈黙。Iはどうしたらいいのかわからないという表情です。
「どんなことを聞けばいいんでしょうか?」
自信のない震える声でIは聞き返してきました
「夢は何ですか?って、まず聞いてみたらいい」
それはIにとって、期待していた返答ではなかったようです。
もっと細かい指示をしてくれるだろうと期待していたようなのです。
「その夢を実現するためにはどんな人が必要ですか?とつなげてみたらどうかな?」
Iの表情が少し綻んだようです。
そして、時を置かず、表情がまた陰りました。
「でも、答えてくれなかったらどうしたらいいですか?」
不安そうです。
「安心していいよ。社長は夢を語りたがる存在なんだよ。ひとつのシンプルでナイスな質問なら答えてくれるはずだよ」
「・・・でもそれって、小生意気な新人の私の質問だったら、ナイスじゃないですよね?」
小生意気か・・・私は思わず笑ってしまいました。
「あのう、同行してもらえませんか?」
遠慮がちに私は同行を求められました。
「君なら大丈夫。たくさん語ってくれるはずだよ。今回はひとりでやってみて!」
可愛い子には旅をさせなくてはいけません。
今まで何度か同行していましたから、今回はひとりで行かせようと思いました。
魚を与えるより、魚の釣り方を教えた方が人は育ちます。
私もそうやって、先輩たちに育ててもらいましたから・・・。
社長が反応する5つの質問はコレだ!!
とはいっても、聞く内容は事前にインプットしておきました。
・趣味、好きな食べ物等、仕事以外に自分との共通点を見つける質問。
・社名の由来、理念、創業期の苦労談。
・将来の夢。
・これからの事業計画と課題。
・一緒に夢に向かいたいと思う、必要な人材。
これが事前にIに用意してあげた質問項目です。
この中から3つの質問を選んで質問するように指示しました。
Iはどうなったでしょうか?
彼女は、満面に笑みを浮かべて帰ってきました。
「社長って、大きな夢を持っているんですね。2時間近く語ってくれました」
「・・・良かったね」
「先方の社長の話を聞いていると、こちらまでワクワクしてきます」
「・・・次はどうしようか?」
「大丈夫です。商談のアポイントをもう取ってありますから・・・」
——賢い者はチャンスを見逃がさない。しかし自ら、それ以上のチャンスをつくる。(フランシス・ベーコン/イギリスの哲学者)
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