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事業承継のきっかけは、起業して20年後の「リーマン・ショック」
今回は、会社エグジットをする前の、事業承継を考えた時期ときっかけについてお話させていただきます。
私が事業承継を考え出したのは、50歳の頃。会社を設立してから20年経っていました。
その時は、ベテラン社員を後継者の対象者と考えていました。
この時に事業承継を考えた原因は3つありました。
1.今から12年前になりますが、リーマンショックのあおりで3分の1の社員を自宅待機させ、結局戻すことはできなかったことから、バブル、リーマンに次ぐ第3のショックが起きたら会社を続けていくことができるか、正直不安だった。
2.紙の広告からネット広告に人材採用のメイン手段が急速に変わってきており、ネットビジネスに対応できる後継者候補が必要だった。
3.効率化、スピードアップを伴う生産性向上を急ぐ必要があったが、苦手意識が先に立ち、自分がリーダーシップを発揮して進める自信がなかった。
昭和世代の自分が、いま一度率先してリーダーシップを発揮しようとは思う一方、最低限、これからの時代を切り開いていく若手の後継者候補をそばに置いておかなければ会社は続いていかないと思ったのです。
それに、学生時代からの夢だった出版の道を歩もうという考えもありました。
既に書きたいテーマが3つほどありましたが、経営をしながら片手間にはできないことを知っていましたから、そのためには経営の前線から退く必要があったのです。
もちろん、中には経営しながら何冊も出版している経営者がいますが、私の場合は不器用で、現場の営業・制作を兼務しながら経営していましたから、執筆活動になかなかとりかかることができなかった。言い訳になりますが、そういう理由もありました。
後継者候補の2人。リーダー研修で自分の将来が別にあることに気づいた
私は身内であるベテラン社員への事業承継から始めることにしました。
長年営業部門で活躍してきた2人に対して、どちらが適任か見極めるために実行したことがありました。それは、2人に1年間で達成してほしいプロジェクトと、リーダーとしての権限を与えたことです。
しかし、今までほぼ、私の指示で動いてきましたので、いきなり責任をもってやれと言われても戸惑ってしまったようです。
アドバイスは与えるようにしたのですが、2人ともなかなかうまくいきませんでした。
ある時、小規模の当社にとっては大きな投資でしたが、ひとり100万円のリーダー研修に参加させたところ、2人とも目からウロコが取れたようなさわやかな顔で帰ってきました。
その研修は、自分の人生と会社のミッションを重ね合わせ、やりがいをもって会社と共に歩もうというものでした。
結果、ひとりは飲食業で起業し、ひとりは人事のスペシャリストとして転職していきました。
2人とも、自分の将来が別にあることに気づいたのです。
次に、後継者候補として、キャリアのある人間を中途採用し、後継者として育成しようとしましたが、これもうまくいきませんでした。キャリアがあるんだから3年で事業承継できるだろうと高をくくっていたからです。
結果、3年で3人採用し、その3人とも会社を去っていきました。
後継者の育成には、5つのプロセスが必要であることを知った
50歳から始めた身内への事業承継は、5人の退職という結果で幕を閉じました。
身内への事業承継は完全に失敗してしまったのです。
一連の経験で得た教訓は、後継者に事業承継するなら、10年の育成期間を設けようということです。
・まずは、基礎から叩き込む
・次に、経営者のあるべき姿を示す
・そして、自分が通った道を、同じように経験させる
・さらに、自他ともに認める№2のポジションを経験させ、徐々に経営権を委譲していく
・最終的に、事業承継した後も、しばらくは補佐する
気づいても、もう遅かったわけですが、今後、この失敗から得た教訓は、悩める社長に伝えていきたいと思います。
●この時点では、まだ第三者への事業売却は一切考えていませんでした。
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