「人のふり見て、我がふり直せ」で、私は倒産から救われた
平成4年、バブルが弾け、会社の業績が急降下。社員が一人辞め、二人辞め、最終的には事務スタッフの女性が一人残っていただけ。
倒産は時間の問題でした。
そんな状態のある日、20代前半の背広姿の男が、ハンカチで汗を拭きながら、会社に飛び込んできました。
「10分で結構です。お話を聞いてください」
大きな声、さわやかな笑顔で、私の席に近づいてきました。
「どうぞ、お座りください」
私は、彼の笑顔に触発され、思わずそう答えていました。
私は、インスタントコーヒーを差し出し、こう質問してみました。
「こんな時代だから、なかなか契約もらえないでしょう?そんな時に、飛び込み営業なんて大変だね」
「有り難うございます」
と頭を下げた上で、彼はこう答えてくれました。
「こんな時代だから、景気の良かった時代の2倍は歩こうと決めて、営業活動をするようにしているんです」
彼は、印刷会社の営業スタッフだった。
私の会社が復活の兆しを見せ始めた頃。
印刷の打ち合せの後、彼は私に、しみじみと話してくれました。
「あの頃は、飛び込み営業をしていても、ほとんどの会社が門前払いでした。そんな中、わざわざコーヒーを入れてくれ、こちらの話を親身になって聞いてもらったことが、本当にうれしかったんです」
感動の波が、私の体中に広がっていくのが分かりました。
「僕の方こそ、君に感謝しているんだ。あの頃、会社が倒産寸前で、ほとんど投げやりの気持ちだったんだ。でもね、君の一所懸命さが伝わってきて、僕も2倍歩くことにしたんだ。おかげさまで、危機を脱することができたよ」
私は、彼に握手を求めました。
なつかしい思い出です。
経営者は決して孤独ではない
起業したら、最終責任は社長である自分にのしかかってきます。
業績が良い時もあれば、落ち込む時もあります。
でも、一喜一憂してばかりいたら長く、経営を続けていくことはできません。
自社の社員、取引先の社長や担当者との人間関係を大切にすれば、社長は決してひとりではありません。
一緒に危機を乗り越え、切磋琢磨することによって、会社の危機は乗り越えられるものです。
会社を経営して分かったことは、経営者は決して孤独ではないということです。
去っていく人もいますが、いい経営をしていれば、自分の行動の道標になる人も現れます。
起業、経営、仕事、生活・・・危機はあらゆる○○に潜んでいます。
そんな時、「ただひとりの本気」に触れることで、意外に危機を脱することができるものです。
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