あなたが会社エグジット(第三者への売却)で交渉の場にいるとしましょう。
交渉する時に、やってはいけないNGルールは何だと思いますか?
売買の原則と言ってもいいものですが、売り手はより高く売ろうとしますが、買い手はより安く買おうとします。
そう言う買い手の立場を理解して交渉の場に臨まないと、うまくいくものもうまくいかない可能性があります。
ビジネスの中で、社長同士、商談を重ねてきた経験を思い出してください。
安易な妥協をして、失敗したことはありませんか?
自説を押し通して、取引先を失くしたことはありませんか?
どんな交渉をするか、事前にシミュレーションしておくことをお奨めします。
次にあげるポイントは、私の経験、会社エグジットした社長仲間たちの経験を通して得たものです。
シリーズでお届けします。
参考にしてください。
◇交渉時のNGルール①/口の軽い人に話す
☆「誰にも言わないで」は「誰にも言っていいよ」と同義語
「これ、誰にも言わないでね」
そういって、裏切られなかった人、いるでしょうか?
これは、相手が実は口の軽い人だった場合、「誰かに言ってください」とお願いしているようなものです。
子供時代からのことを思い出してみましょう。
誰でも必ず経験がある・・・と断言してもいいでしょう。
軽はずみな言葉は、会社を売ろうとしている局面での行為としてはタブーです。
人は、話を秘密として制限されると、誰かに話をしたくなるもの。
口の堅い人でも、いつか必ず、他の誰かには話すものです。そうすると、その中にさらに口の軽い人がいたら、話に尾ひれがついて広がっていきます。
会社エグジットが終了してからなら問題ないでしょう。
むしろ、「あの人は、会社を売ってよかったね」という噂を、それこそ口の軽い人を通じて広めてもらえばいいのです。
☆伝言ゲームは、風評被害として銀行までつぶす力を持つ
では、誰に相談するのがいいでしょうか。
答えは簡単です。
それは、運命共同体の中で、大事な関係性を持つ人たちです。
苦楽を共にしてきた家族、社員、ブレーン、取引先などのステークホルダー(利害関係者)です。
会社エグジットが成立する前に、ステークホルダー以外に、「これ、誰にも言わないでね」と言うこと自体、ナンセンスなのです。絶対に言ってはいけない相手は、利害関係のない人というのを肝に銘じておきましょう。
知人A 「私にだけ言ってきたけど、あの人、会社売るみたいよ。人には言わないでね!」
Aの知人B 「あそこの会社、業績悪いからどこかに引き取ってもらうみたいだよ。人には言わないでね!」
Bの知人C 「あそこの会社、つぶれるみたいだよ。人には言わないでね!」
かつて、この伝言ゲームが原因でつぶれた銀行があります。
そのような事態に陥らないように、事前に、相談する人、しない人の線引きをしておきましょう。
たとえば、あなたが、親友と思っていた相手に、
「私の会社を○○さんに売却しようと思うんだ・・・誰にも言わないでね」
と、釘を刺しつつ、売却先を親友に言ったとします。
すると数日後、
「君の会社、売るの?そんなことないよね?」
と、仕入先の担当者が不安げな顔で訪ねてきた。
「君の会社、〇〇社に売るんだって?これからはそこに仕事頼まなくちゃいけないの?」
と、ぶっきらぼうな声で大口の顧客から連絡が入った。
「社長、会社売るんですか?僕、転職しなくちゃいけないんですか?」
と、今にも泣きそうな顔で、ベテラン社員が駆け込んできた。
これらは、充分あり得る話です。
会社の売却情報が流れると、運命共同体の利害関係者に迷惑が掛かり、風評被害によって、まとまる話もまとまらず、「あの会社、倒産するらしいよ」という根も葉もない噂が広まって、会社を存亡の危機に立たせるかもしれません。
会社をエグジットすることについて、言わざるを得ない大事な関係者以外には口外はしない・・・。オーソドックスではありますが、これしかありません。
利害関係者と「守秘義務契約書」を結ぶこともあります。
また、利害関係者に話をする時も、会社の売却先と基本契約書や最終契約書を交わすまでは、「仮に会社をエグジットするとしたら・・・・」とか、「・・・まだ決定したわけではないけどね」などと、白紙に戻る可能性もあることも含め、あくまでも仮定の話として伝えることです。
そして、関係者以外の人たちには、会社エグジットが決定し、最終契約書を交わした後で、会社のつながりにおいて重要な人から順に伝達していくことです。
◇第三者への事業承継の入門書
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