後継者を誰にするかで、事業承継の9割は決まる
会社を同業社に「会社エグジット(売却)」してから7年経ちました。
ふり返ると、会社経営する中で最大の仕事は何だったかというと、それは事業承継でした。
一介のサラリーマン出の、しがない素人経営者だった私も、紆余曲折しながら、会社を存続させて20年。50歳になっていました。
リーマンショックで青色吐息のなか、会社を誰に、いつ継承すればいいのか、悩み始めたのもこの頃です。
最初は、名古屋の大手経営コンサルタント会社の、事業承継講座を受講し、大まかな事業承継や相続のプロセス、留意点を学ぶことから始めました。
「承継をスタートさせるまでに、最低でも3年の準備期間が必要」
講師にそう言われた時、身の引き締まる思いを味わいました。
(曲がりなりにも20年会社を存続できたことは、少なからず社会に貢献してきたということ。自分が引退したとしても、会社はこれからも存続させていかなければいけない)
社長業の中で、いちばん大事な仕事だと思いました。
事業承継は、代表権を誰に渡すかを決めることで9割終わっている――当たり前のことではありますが、それから3年の準備期間の中で確信したことです。
後継者を選ぶ上で必要な5つの能力
「息子や親族に渡せばいいんだよ」
そう言われる方も多いですが、その考えは失敗のもとです。
・会社の理念を受け継げる人
・社員を引っ張り、育成できる人
・一連の仕事ができ、指示できる人
・人徳があり、社員、取引先に信頼される人
・利益をつくれる人
この5つがそろった人をすぐ見つかるはずもなく、仮に息子に引き継ぐにしても、時間をかけて育成する必要があります。
事業承継に対する思いが募りながら3年。
該当者はなかなか見つかりませんでした。
後継者候補の将来の幸せがイメージできるか?
そんな中で、焦りから失敗したことが2つ。
1つ目。
(帝王学を、自分でたたき込めばいいか)
という安易な考えで親族の一人に声をかけたところ、1週間考えさせてくれと・・・。
「今の気持ちとしてはチャレンジしてみたい」
それが1週間後の彼の返答でした。
その返答を受け、私は猛烈に反省しました。
彼は大手企業に勤めており、その仕事と安定した生活を捨て、リーマンショックで大変な経営を強いられている小さな会社を引き継がせていいものか。
自分は彼の将来の幸せを、ちゃんとイメージできているのかと。
私は彼に頭を下げました。
声をかけておきながら、一念発起してくれた親族には申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
短期間で後継者を育成できるなんて思っちゃいけない
2つ目。
幹部候補を早期育成して後継者にしようと、かなり背伸びしなければ達成しないだろうミッションを、複数の社員に与えました。
その結果、3年で5人の社員が会社を去っていきました。
前述の5つの能力を備えるまでには5~10年はかかるものです。
頭では分かっていたつもりでしたが、リーマンショックの業績ダウンの影響もあり、焦りから、その鉄則が頭から抜け落ちていたようです。
以上の2つの失敗により、私は身内(親族・社員)への事業承継をあきらめざるをえなくなりました。
【教訓】
●無理な人選、無理な納期設定はしない
●声をかけるなら、相手の将来を熟慮の上
●後継者の育成は10年かかるものと思え
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