株の売却、51%にするか、100%にするか、そのキーポイントはコレだ!!

no-waste

会社の売却金額が決まり、売却予定先のH社への売却金額で握手でき、その基本合意ですべてが丸く収まるものと思っていました。

1社に合併する前に、準備期間は必要?

ところが、もうひとつの山が目の前にそびえていたのです。

それは、何年、関連会社として会社名をを残すかについてでした。

当社とH社は同業です。本来は、1社に統合した方がメリットがあります。

・事務作業のダブりがなくなり、ムダが省ける。
・両社の強みと弱みを補完し合い、シナジー効果によって業績向上が狙える。
・結果、利益体質が強化される。

そんな絵を描くことができます。

しかし、早急に事を進めると、デメリットも発生します。

・会社の風土が違うため、社員同士に軋轢が発生しやすい。特に、売却側の社員はコンプレックスを抱えやすく、買収側の社員は優越感を感じやすい。それが人間の心理というもの。それによって、退職者が出てしまう可能性がある。

・お互いの強みと弱みを肌に感じた上で統合しないと、本当のシナジー効果が現れない可能性がある。

・統合後の経営理念を事前に創っておかないと、社内外のステークホルダー(利害関係者)を混乱させてしまう可能性がある。
「当社は、誰のために、何をする会社か」を言語化しておく必要がある。

会社名がなくなる未練とマリッジブルー

そのため、私が売却する会社を、しばらくは関連会社として残し、1社の統合メリットが確認できた上で、当社を合併する・・・Hとは、そういう方向で話を進めていました。

ところが、この「しばらくは」の期間が、私の中で定まらなかったのです。

「10年でどうかな?」

私は、そうHに提案していました。

当初の基本合意の売却金額は、当社の株の51%に対してでした。
51%あれば、Hは当社を子会社にすることができます。
そして、私の保有する49%の株を徐々に売却していき、「しばらくは」の後に、残りの株をすべて売却するというものでした。

私は、それを10年間でと提示したのです。

それほど、私は自分の創った会社に愛着を持っていたのでしょう。
なるべくなら、手放したくはないという、マリッジブルーのような心境にいたのです。なるべく長く社名を残したかったのです。

Hは、首をタテには振りませんでした。

「それは長すぎる」

Hにしてみると、生産効率を上げ、一体感をもって会社の成長を考えるなら、会社を早目に合併した方が得策ですから・・・。
客観的に見ても、それは頷ける話です。

もう一つありました。
49%の株を持っている私は、いくつかの否認する権限を持っています。

そのひとつが、会社の売却や合併を否認する権利でした。
持ち株比率を考えると、私が株を保有する限り、会社を存続させることができてしまうのです。

そうなると、Hが経営をしていく上で、私は邪魔な存在になってしまいます。
そうしたくはありませんでした。

次にやりたいことがあるなら、株は100%売却した方がいい!?

さらに、もうひとつ。
私には次の夢がありました。

学生時代からやりたかったことを実現するには、経営の現場から離れる必要があったのです。
10年居座ったら、夢の実現は遠ざかります。
それは、したくありませんでした。

Hにしても、しばらくは私にいてほしいという希望がありました。

・大きな取引先のほとんどは、社員がしっかり受け継いでいるとはいえ、私が開拓してきた顧客でした。
・社員も、私のマネジメントに慣れています。
・外部ブレーンとの折衝の歴史もあります。

せっかくの資産を失わないための統合作業(PMI)に、しばらく私は必要だったのです。

それから2カ月経ちました。

そして、熟慮の末、私は最初から株を100%売却することに決めたのです。

「しばらくは」の期間は、主導権のすべてがHに渡る以上、全権委任することにしました。

その結果、関連会社として存続する期間は3年、ということになりました。

私とHは、既に丸めようとしていた51%の株の評価を白紙に戻し、100%の株で再評価することになりました。

これについては、前回の計算方法を応用し、意外とスンナリ合意に至りました。

会社統合メリットを最大化するために、「社長スカウト」するという手がある。

株の売却後は、Hの会社の隣りのオフィスが空いていたこともあり、そこに引っ越し、社員同士の交流を図ることに決めました。

3年あれば、社員の混乱を避け、定着してもらえると、私もHも判断したからです。

交渉が始まってから、6カ月経っていました・・・。

後は、関連会社の社長をスカウトするだけでした。

対象者は決まっていました。

仕入先からの当社の経営渉外スタッフであり、私と社員の話し合いのファシリテーターの役を担ってくれたO本人でした。

彼への「三顧の礼」の物語は、前述させていただきました。

彼と交わしたミッションは、

・3年後の合併までに、当社の社員を、H社の社員よりも成長させること。
・最初から代表権を持った社長のポジションを与えること。
・私は代表権のない会長として、一切口を出さず、バックアップに徹すること。

その3つでした。

スカウトするまでに3カ月を要し、Hとの話し合いから9カ月が過ぎていました。

これで、私とHは、最終契約に合意したのです。

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