会社が傾いた時、救ってくれた印刷会社の営業のひと言

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どん底にいる時に、思わぬ光が舞い込んでくる時があります。
今回は、飛び込み営業で訪問してきた営業スタッフに救われた時のお話です。

「景気の良かった時の2倍は歩く」

バブルが弾け、会社の業績が急降下中の頃。
20代前半の背広姿の男が、ハンカチで汗を拭きながら、会社に入ってきました。

当時の営業手段の主流は、電話がけか飛び込み。

「10分で結構です。お話を聞いてください」
大きな声、さわやかな笑顔で、私の席に近づいてきました。

「どうぞ、お座りください」
私は、彼の笑顔に触発され、思わずそう答えていました。

私は、インスタントコーヒーを入れて上げ、こう質問していました。
「こんな時代だから、なかなか契約もらえないでしょう?そんな時に、飛び込み営業なんて大変だね」

「有り難うございます」
と頭を下げた上での彼の答えは、こうでした。

「こんな時代だから、景気の良かった時代の2倍は歩こうと決めて、営業活動をするようにしているんです」

彼は、印刷会社の営業スタッフでした。

「会社が復活したのは、君のおかげだよ」

会社が復活の兆しを見せ始めた頃。

印刷の打ち合せの後、彼は私に、しみじみと話してくれました。

「あの頃は、飛び込み営業をしていても、ほとんどの会社が門前払いでした。そんな中、わざわざコーヒーを入れてくれ、こちらの話を親身になって聞いてもらったことが、本当にうれしかったのです。その後、お仕事もいただけました。有り難うございました」

体の芯から、感動の波が広がっていくのが分かりました。

私は彼にこう伝えました。

「僕の方が、君に感謝したいくらいだよ。あの時、君の一所懸命さが伝わってきてね。会社を閉めようかと悩んでいた頃だったんだ。君を見倣って、僕も2倍歩くことにしたんだ。おかげさまで、危機を脱することができたんだよ」

私は、彼に握手を求めました。
「有り難う!」