6月18日に出版した事業承継のニューノーマル本「愛の会社エグジット」。その中の第5章の「あなたはライオンタイプ?それともエンジェルタイプ? タイプ別診断とエグジット事例紹介」の中から、「イノシシタイプ」をご紹介します。
イノシシタイプ/会社はエグジットせず、中身を変えてでも存続させる
●繊維問屋→会社エグジット後、IT業
◇120年続く会社を。後継者の思いに合わせて、業種をチェンジ
Cさんは120年続く愛知県の繊維問屋の5代目社長を務めています。
ある時彼女は、IT企業に勤める30代の息子に、こう語りかけました。
「会社を継いでくれないかな?」
息子さんは、一瞬何を言われたのか、判断できずにいたようです。
「母さん、会社は繊維問屋じゃないか。IT技術者の僕が継げるわけがない」
当然、Cさんにとっては、予想していた反応でした。
「違うの。あなたもIT技術者として10年以上のキャリアがあるわね。そろそろ独立してもいい頃じゃないかな?」
一拍置いて、Cさんは息子の反応を見ていました。
「えっ?独立していいの?今、会社を継げって言ったじゃないか?」
息子さんは、ますます訳が分からないという顔をして混乱して様子だったそうです。
「今の会社を繊維問屋じゃなくて、ITの会社に変えて、会社を継ぐというのはどう?」
Cさんは自分の思いを話し始めました。
・先祖から受け継いだ会社を廃業させたくない。
・息子がIT会社を起業した場合、果たしてうまくやっていけるか心配。
Cさんは、先祖と息子の間で揺れ動いていたのです。
悩んだ彼女が出した結論。それは、会社の器は変えず、業種の中身を変えて息子に継いでもらうという荒業の事業承継だったのです。
そうすれば、先祖から受け継いだ会社はそのまま存続でき、息子はひとりだけで起業の苦労を味わうこともなくなるというわけです。
彼女の悩みが同時に解決できるアイデアです。
ただし、難題も抱えています。
・在職中の社員がIT業務にすぐに携わることは難しい。
・すぐに業種転換をしてしまったら、取引先に迷惑をかけ、会社そのものを危機に陥れてしまう。
・金融機関からの信用不安を起こしてしまう。
そこで、Cさんは、移行期間を設けることにしました。
・あと7年、自分で繊維問屋の社長を務める。
・息子さんはその間、立ち上げたIT部門の部門長として事業を軌道に乗せる。
・Cさんが率先して息子の後継者育成をする。
・従来の社員に息子がIT教育を行う。同時に、ITに強い社員を採用する。
・繊維問屋の取引先に会社のIT化の営業を行い、IT事業部の取引先になってもらう。
・IT業務の事業が軌道に乗っていく中で、繊維問屋の取引先に対しては、親しくしている他の繊維問屋を紹介していく。
以上のシナリオを考えて、Cさんは息子に打診したというわけです。
Cさんは息子さんに感謝されたそうです。
<着目ポイント>
起業すること自体は難しいことではありません。
難しいのは、事業を軌道に乗せるまでの道のりです。
途中で資金が枯渇してしまったら、ジ・エンドです。
最初から資金面で苦労する必要のない環境にあれば、不安を抱えることなく、事業に専念できます。
Cさんは、息子の不安を取り除き、事業に専念できるようにバックアップするため、業種転換案を考え出したのです。
あなたの周囲に、現在の会社の業態とは違う業態での存続を考えている人がいるなら、Cさんのやり方は参考になるでしょう。
ただし、次の3点は忘れないようにしましょう。
・時間をかけて社内外の理解を取りつけること。
・後継者教育をしっかり行うこと。
・社員を大切にし、うまくシフトチェンジしていくこと。
チャート式診断テストで、あなたの【エグジットタイプ】を見てみよう
本書「愛の会社エグジット」の第5章の最初には、「愛の会社エグジット後のあなたの人生は何タイプ?」(99ページ目)というチェックシートをつけています。
そのチェックシートによると、「イノシシタイプ」は、次のようになります。
会社と自分の生活、どちらを重視?→自分の生活
↓
好きな趣味の時間、もっと欲しい→NO
↓
借金はイヤだ→YES
↓
変化は苦手→YES[
↓
イノシシタイプ→会社はエグジットせず、中身を変えて存続させる荒業
チェックシートをなぞると、そうなります。
他にも、ライオンタイプ、ペガサスタイプ、エンジェルタイプ、チンパンジータイプ、パンダタイプ、ウサギタイプの6つのタイプがあります。
あなたも、どのタイプか、本書のチェックシートでトライしてみませんか?
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