・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・私が会社を第三者に事業承継したのは会社を経営して25年経った時でした。
その間、会社を倒産の危機に追いやったことが2回ほどありました。
応援してくれていた両親が立て続けに他界しました。
複数のベテラン社員を後継者として育成しようとしましたが、ことごとく失敗しました。
そして、ふとしたことがきっかけとなり、1年後には会社を売却することになったというわけです。売却に至るまではさまざまな葛藤がありました。
今回は、シリーズで、そのてんまつを小説仕立てでご紹介します。
読んでいただけたら幸いです。
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会社の現在価値だけじゃなく、将来価値も加味しよう
「がくさん、あなたは、自分の会社をいくらで売りますか?」
ついに来たかと思いました。
顧問税理士のYが、3回目の打ち合せで、単刀直入に質問してきたのがこれでした。
第1~2回目で、以下の打ち合せは終わっていました。
・会社をエグジットするまでのスケジュール確認
・会社の強みと弱みの整理
・交渉時の留意点
・先方に渡す資料の確認
そして、今回は肝心の会社の査定でした。
「〇〇〇ではどう?」
「その根拠は?」
Yは、日頃は優しいのに、授業になると厳しくなる女性教師のようでした。
「貸借対照表の資本合計が会社の価値じゃないかと思ってね・・・」
「がくさん、それでは話になりません。確かに、おおざっぱにいえば、会社の現在価値はそうかもしれませんが、それだけが価値ではないのです」
「・・・どういうことかな?」
「損益計算書の税引き前当期利益が入っていません」
「貸借に反映されているじゃない」
「そうじゃなく、将来価値を加味しましょうと言っているのです」
「将来価値・・・?」
「そうです。会社を売却した後、従来通りでいけば、3~5年は同等の利益が上がるはず。それを加味すべきです」
(そうか!今の社員と顧客構成でいけば、確かに何年かは同じ利益を弾き出せる)
私は、Yの言葉を具体的にイメージしてみました。
「もうひとつ、社員と顧客の価値を、のれん代として加算してみてはどうでしょうか?」
・・・そんなやり取りが1時間ほど続きました。
「どうですか?」
Yは、厳しい教師から優しい女性に戻っていました。
私の中に、感動が駆け巡っていました。
「25年の間に、こんなに会社の価値が上がっていたなんて、正直知らなかった・・・社員とお客様のおかげだね」
私は、自分の中に自信がみなぎっていました。
(続く)
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