起業時に融資を受けたい人へ。『信用』と『信頼』の違いが奇跡を起こす。

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「起業時に、銀行からお金を借りるためにはどうしたらいいでしょうか?」
自著【失敗しない起業の法則37】を読まれた方からの質問です。

出鼻をくじく言い方になってしまいますが、

「最初は無理だと思った方がいいいでしょう」

というのが私の返答です。

『信用』が、あなたの過去に対する評価バロメーターである訳。

私の体験をお話しさせていただきます。

私が30歳で独立した時、銀行は見向きもしてくれませんでした。
今は、それはそうだよね、って思います。

後ろ盾もなく、将来への希望とやる気だけで貸してくれるほど銀行は甘くはないからです。

事業計画書を出しても、保証人やお金に換えることのできるもの――たとえば土地などの担保がなければ、おいそれと銀行は融資してはくれないのです。

これは、信用力がないということです。

ところで、あなたは、『信用』をどうとらえていますか?

過去の実績や担保などのモノやコトに対する評価によって取引することを、信用取引と言います。

つまり信用は、経済用語のひとつなのです。

自分には信用されるモノやコトがありませんでした。

でも、落ち込んでばかりいても前に進まないので、同業で成功している先輩に頼み込み、300万円を融資してもらうことができました。

先輩が私を信頼してくれたから貸してくれたのです。

これは信用ではなく、信頼なのです。

この『信頼』は、信用とは似て非なるものです。

先輩は、自分の人となりを評価してくれ、将来私が実現しようとしている夢を応援してくれたから貸してくれた――つまり、信頼は過去のモノやコトに対してではなく、良好な人間関係の中で将来性を評価し、融資してくれたのです。

信頼関係とは言いますが、信用関係という言葉はありません。
信用取引とは言いますが、信頼取引という言葉はありません。

『信頼』が、あなたの将来に対する評価バロメーターである訳。

信用は過去の評価、信頼は将来に向けた評価ということになるのです。

本来は信用の上に信頼関係が成り立つべきです。

信頼関係の中で融資を受けたわけですから、何を置いても、借りたお金は早く返済する必要があるからです。

そうしなければ、信頼関係自体が崩れてしまいます。

私は、1年で返すという先輩との約束を、前倒しで達成することができました。

◇ワンポイントアドバイス

約束を守る。嘘偽りがない。素直であること。
『信頼関係』は、そういう日常の行動の積み上げから生まれるものです。
ただし、将来に対する計画がしっかりしていなければ、また、達成意欲が感じられなければ、相手からの投資を呼び込むことはできません。
過去に実績がなくても、将来設計はしっかり構築しておく必要があります。

起業から1年後に、やっと銀行からのゴーサインが出た。

先輩との信頼関係でお金を借りることができた時、私は予定通り会社を設立することができました。

先輩からの信用を得るために、1年で返済するべきところを、早期に返済することもできました。そして、再度銀行からの融資を受けるために、1年間の実績とこれから3カ年の事業計画を提出してみました。

「希望通りの融資額で、上からの決裁が下りました」
銀行の担当者からの連絡に、私は有頂天になりました。

(やっと認めてもらえたんだ)
率直な喜びが込み上げてきました。

ところが、会社を設立して3年が経とうとした時、バブルが弾けました。
当時、広告費、交通費、交際費の頭文字を取った3K業種の会社は、特に苦境の波にさらされました。

私は広告費を生業とする事業を営んでいただけに、経営難はすぐに訪れました。
将来に不安を感じた社員が一人、二人と去っていき、10人いた社員が1年も経たずに3人に減っていきました。

給料は大きな経費であっただけに、結果経費を抑えることはできましたが、圧倒的多数の企業が広告費を抑えたため、収入の落ち込みが激しく、経費を抑えるだけでは早晩資金が底をつく状態に陥っていきました。

3分の1ぐらいのスペースの賃料の安い事務所に移転したことは言うまでもありませんが、銀行から受けた融資の返済額が一番大きかっただけに、銀行との交渉が重く肩にのしかかってきました。

銀行からの『信用』を失うと、最悪の事態が待っている。

事務所の場所が変わったため、銀行の支店も変えようと思い、新しい支店に赴きました。

同じ銀行内の支店間ですから、容易に口座を移すことができると思っていましたが、それが浅はかな考えであることが判明しました。

「保証人はいらっしゃいますか?保証できるモノはありますか?」
若手の営業担当が、唐突に保証の有無を尋ねてきたのです。

「支店間での融資の移し替えはできないのですか?」
「とは言っても、この支店では初めての取引になりますからねえ。ところで、お父さんの年金はどうですか?」

「父に話してみますけど、手続きはどうしたらいいですか?」
「ここに一緒にいらしていただきたいのですが・・・」

「父は今埼玉県に住んでいて、病気がちなので、こちらに伺うのはちょっと・・・」
「それなら、他の保証がないようですので、口座の移動は無理ですね」

こんなやりとりでした。口座の移動を拒否されたのです・

私は、大きなショックを受けました。
あの時の自分に対する悔しさと情けなさは、今も心の奥底に沈殿しています。

『信用』を失うとは、これほどの打撃を伴うものだったのです。

『信用』『信頼』がひとつになった時、会社は起動するようになる。

1カ月ぐらい悶々とした時を過ごしていた時のことです。
友人の会社を訪問したところ、Iさんという信用金庫の営業スタッフが訪問していました。

見覚えのある顔でした。前事務所の時、何度かお会いしたことがある融資係だったのです。

「お久しぶりです」

私は、挨拶もほどほどに、Iさんに窮状を訴えていました。

「私が動いてみましょう。いくつか資料をご用意ください。何度かお会いしている中で、あなたには将来性があると思っていましたから」

泥沼に蓮の花が咲いたような感覚でした。
何よりも自分を信頼してくれている人がいたことに驚きました。

きっとそばにいる友人が、私が訪問する前に、Iさんに話してくれていたのでしょう。その友人とIさんの信頼関係が私への信頼感につながったのは間違いのないことだと思いました。

しばらくして、Iさんから融資を肩代わりできるという吉報が入りました。

◇プラスワンメッセージ

月々の滞りのない返済が『信用』を作ります。
私は友人とIさん、2人の信頼を裏切らないために、毎月の返済期日までに滞ることなく入金を続け、数年かけて借金を完済することができました。
その時点で、銀行からも本当の『信用』を得たのです。
信頼関係があればマイナスからでも這い上がれるものです。
でも、マイナスからプラスに転じるまでの行動――月々滞りなく借金を返済するなど――で、信用を積み重ねておくことが大事ですね。

質問への答え、「最初は無理だと思った方がいいでしょう」というのは、信頼と信用の違いを理解し、今できることは何かを考えた方が、突破口を作ることができるということです。

・信頼関係のある方から将来性を担保に融資を受ける。
・早期に返済する。
・実績という過去を担保として銀行から融資を受ける。

あくまでも一つの方法と捉えていただきたいのですが、上記のように、私が体験したような方法を応用してみてはいかがでしょうか。

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