会社の株を売却して3年後、子会社になっていた当社は合併されることになりました。
会社の売却による退職者はひとりも出なかった。
ひとつ目の成果は、会社の売却、合併を理由とする退職者はひとりも出なかったことです。
正直、社員の心の中まで覗くことはできません。
というのは、別の理由で退職した社員が、その後数人いたからです。
でも、私は会社を売却したことを後悔していません。
なぜなら、会社を売却した一番大きな理由は、社員の成長と将来の安心だったからです。
最初は、売却先の子会社として、2社の社員が交流できる環境を作り、その間、スカウトした新社長のもとでキャリアアップし、合併後には、売却先の社員と互角以上の能力を発揮する・・・。
実際、そうなった元社員たちを見ると、「会社を売ってよかった」と、心から思います。
元社長である私が、第2の人生をスタートする必要条件のひとつは、社員が不安なく、成長ステージに立っていることでした。
会社の売却によって社員が成長してくれたことは、私にとって大きな喜びでした。
業界の変化が、2社合併のチャンスを創造
二つ目の成果は、当社と売却先の合併によって強力なシナジー効果とスケールメリットが生まれ、会社の価値が上がったことです。
振り返ると、会社の売却を考えるきっかけになったのは、会社のスケールを大きくすることを、仕入先メーカーに要望されたことでした。
正直、相当悩みました。
それは、私の会社だけではありませんでした。現に、一緒になったH氏の会社も、同じようにスケールを求められていたからです。
Hも相当、悩んだようです。
他の業界も、似たり寄ったりの状況はあるでしょうが、人材採用の業界は、紙からネットへの移行も待ったなし、採用の確率を高めるための商品開発も待ったなしの状況でした。
企業は、人、モノ、金、情報、時間が主な経営資源ですが、筆頭には「人」が来ます。
ネット業界、コンサル業界からの参入、外資系企業の進出も、あっという間でした。
こういう状況の中、、仕入先メーカーは、その激変業界のリーダーシップを取るために、我々に、大きな変化を望んだのです。
振り返れば、それは大きなチャンスでした。
おかげさまで、「会社の売却」の選択肢を発見し、その準備の中で、前々から温めていた、自分のやりたかった夢に向かうことができたのです。
売却するきっかけを与えてくれた仕入先メーカーには、心から感謝しています。
・・・会社の名前がなくなった時、メーカーは1冊の冊子をプレゼントしてくれました。
「〇〇魂よ、永遠に」というタイトル。
そして、今まで関わってくれた、41人の仕入れ先メーカー側のスタッフ、同業の社長仲間たちのコメント、そして、どこで拾い集めたのか、たくさんの懐かしいシーンの写真、かつての社員たちと写った写真・・・。
「お客様からの大きな信頼と、たくさんの求職者にhappyを提供し続けてきた実績は、東海マーケットにおいて、かけがいのない財産となっています。
採用を通じてお客さんの事業を支え、牽引されてきた、がくさんの教えは、○○に関わったすべての人に受け継がれます。
「お客様のそばで自己実現」の想いを胸に、次なるステップを歩むみんなをこれからもよろしくお願いします!
がくさん、ありがとうございます!」
これは、冊子のあとがきです。
少し照れますが、紹介させていただきました。
この冊子を編集してくれたNUさんには、心から感謝しています。
一生、大事にしますね。
One for Allの精神なくして会社の売却はない。
3つ目は、仕入先メーカー、取引先の評価が格段に上がったことです。
社長でスカウトしたO氏は、合併後、売却先の会社で、取締役として、大きな変革を実現しています。
私と3人のベテラン社員のファシリテーターとして、会社の売却に寄与した人間が、売却先のリーダーシップを取っているのです。
それもそのはず。
私の会社と、Hの会社のそれぞれの強みと弱みを一番知っている人間は、彼だったからです。
Oのリーダーシップのもと、合併先のH社は、新しい理念を作り上げました。
私の会社売却の成功は、売却先のHと、スカウトしたOの存在があってのことです。彼らと接触する前、私は、その当時の苦境から抜け出すために、ムリな手を打ち続け、その結果、失敗したことは数知れずありました。
私は、ひとつだけ、自分に約束していたことがありました。
それは、自分の第2の人生を幸せにスタートするためには、周りの大事な人たちの幸せが必要条件、というものでした。
One for Allの精神です。
なぜそう思ったか・・・簡単なことです。
社長になった瞬間から、自分の体は公的なものだからです。そう思うまでに、長い時間を要しましたが・・・。
ひとりだけ抜け駆けして逃げ出す社長は迷惑な存在でしかありません。
ところで最近、ここ3年間で、会社を何社か買収している人に会いました。
彼は、こう言っていました。
「シナジー効果があるのであれば、会社は買収したい。その方が早く目標が実現できるからだ」
そして、こうも言っていました。
「でも、いくらほしい会社であっても、中途半端に今までの権利を主張する社長の会社は、絶対買わないね」
・・・会社を売却した後の喪失感は、確かにあります。
長年、我が子同然につきあってきたわけですからね。
でも、売却先の価値が増大すれば、それは間違いなく、我が子を嫁がせた証です。
寂しさは残りますが、喜びましょう。
・会社を売却することによって、周りの人間が幸せになり、売却先の価値が上がって社会貢献の度合いが増えることを想像してみてください。
・大きな荷物を下ろし、第2の人生のスタートラインに立っている自分を想像してみてください。
社長はいつか卒業するものです。それがあなたにとってすぐそこまで来ているのなら、今から準備をしましょう。
☆次からは、起業や個人が買収を考える大きな理由についてお話します。