居酒屋売上ダウンの中、焼肉店が大人気の「なぜ?」
2020年11月の調査によると、ファミレス全体で昨対比売上20%ダウンする中、焼肉業態は8%ダウンにとどまっていました。
なぜ焼肉店に人気が集まったと思いますか?
外出自粛、夜は8時まで、ある時はお店を一時閉店という飲食業界の中で、一体なぜ?
それは、コロナ禍によって、「換気の良い」お店が焼肉店だったからです。
決して消費者が外食を嫌っているわけではありません。
安心、安全に、ひと時でも楽しめるお店、ストレスを発散できるお店には行きたいものです。そのニーズに応えているのが焼肉店というわけだったのです。
その中でも、2つの事例が顕著です。
ひとつは「焼肉キング」。
焼肉業態が昨対比8%ダウンの中にあって、売上がアップしているのです。
・DX(デジタルトランスフォーメーション/デジタル技術による業務やビジネスの変革)による商品開発。
・配膳ロボの導入。
・テーブルを回って焼き方指導をする「焼肉ポリス」の人材活用。
など、顧客満足を上げるための経営努力を加味しているからこそ、昨対比プラスという数字をはじき出せているのです。
しかも、なんと、店員が同業態の2倍いるのに利益を上げ、総資産経常利益率は8,5%という高収益を実現しているのです。(主要外食企業の平均は2,2%)
もうひとつは「焼肉の和民」。
外食産業の業態の中でいちばん打撃を受けた居酒屋業態の「和民」を焼肉業態に一挙に変えようとしています。また、店内とデリバリーを兼ねた「から揚げの天才」というお店も開店し、居酒屋業態の社員の受け皿もつくろうとしています。
換気の良い焼肉業態に企業努力を加味するニューノーマルの飲食店は、消費者を引き寄せているということです。
「ゴーストレストラン」は儲かる、の「なぜ?」
ところで、「ゴーストレストラン」という業態、ご存知ですか?
「席なし」「調理だけ」「配達特化」のお店のことを指します。
なぜ、この業態が広がっているのでしょうか?
・外出自粛により、ウーバーや出前館のようなデリバリーが一挙に増え、逆にお店への来店客が一挙に減ったため、配達特化型にした方がニーズにかなっているため。
・休業中の店舗を再利用できるため。
・開業資金が5分の1ぐらいで済んでしまうため。(G社の場合、本来は3500万円かかるところが、750万円で済む)。
内装や座席などの店内環境にかかる費用や接客人員の人件費が必要ありませんから、かなりのコストダウンができるというわけです。
味には自信があるという外食企業の攻めのニューノーマルですね。
デリバリーサイトを利用した飲食サポート企業がもてはやされている「なぜ?」
TGALという会社をご存知でしょうか?
自社でもお店を持っているのですが、コロナ禍以降、飲食店の経営サポートをして伸びている会社です。
地域の隠れた味自慢の飲食店を開拓し、デリバリーサイトに紹介したり、業績の思わしくない飲食店に、自ら開発したレシピと食材を提供して経営サポートをしたりと、各飲食店の経営を応援している会社です。
たとえば、「ニャムニャムチキン」。
この開発商品を扱って利益を上げている飲食店が多数あるのです。
しかも、加盟店の店内環境や設備に合ったレシピや食材を提供。本業の飲食事業にしわ寄せがいかず、並行して事業ができる工夫を施しています。
社長の河野さんは、こう言っています。
「地域の味をデリバリーしたい。離乳食や介護食も扱っていきたいですね」
飲食店を支援する会社が、しっかりした経営理念をもって、一緒に利益を上げていく・・・これもニューノーマルですね。
昭和の頃の「競合に勝ってシェアを取る」争いの時代から、「競合と協力し合ってシェアし合う」ギブの時代に変化していること自体、ニューノーマルではないでしょうか。
いつの時代も、厳しい業界は変化を迫られます。
変化に対応できない企業は看板を下ろし、変化に対応できる企業は大きなイノベーションを創り出し、ニューノーマルを生み出していきます。
食は人間にとって、とても身近で大切な存在です。
私の故郷、山深い秋田の里に、かつてはいろいろなお店がありましたが、ずっと残っているお店は、馴染みの食堂でした。
・・・今後の飲食業界に注目です。